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主人公のあかりは生きづらさを抱えた高校生。家庭にも学校にも馴染めず、他人が難なくできることも巧くこなせない。「病院の受診を勧められ、ふたつほど診断名がついた」あかりだったが、アイドルグループ「まざま座」のメンバー上野真幸を推し始めてからは「推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対」になり、それが自分の「背骨」と感じるようになる。推し仲間とコミュニケーションを取り、CDの費用を稼ぐために苦手な接客バイトを懸命にこなす。
 だがそんなある日、推しがファンを殴って「炎上」してしまう――。
 お金と時間とエネルギーを推しに注ぎ込む生活。見返りのない一方通行の「推し活」の様子が、希望と危うさの両方を孕(はら)みながらつぶさに描かれる。推しはあかりを直接には救わない。あかりの実生活はどんどん行き詰まっていく。