取材源の秘匿
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取材に際しての情報源である人物を特定しうる情報を他に漏らさないこと。
ジャーナリストの義務あるいは権利で、ジャーナリストの最高の倫理の1つとされる。
これは、情報源との信頼関係を保護すると同時に、情報源を萎縮させずにさまざまな情報を取材し国民に伝達していく上で不可欠である。
(中略)
日本では制度上明示的には認められておらず、公正な裁判の実現が優先されることも少なくないが、
憲法上、取材の自由の一環として保護されるべきであるとする議論もあり、
捜査や裁判に必要な証拠が他の手段で得られる場合には取材源の秘匿をある程度尊重する判例や実務が見られる。
06年には、米国健康食品会社の日本法人に対する課税処分報道をめぐり、NHK記者や読売新聞記者が情報源についての証言を拒絶したケースで、
東京高裁は、民事訴訟法上定められた「職業の秘密」として保護される余地を認める決定を行った。
(浜田純一 東京大学教授 / 2007年)

取材対象者の特定につながる情報を漏らさないこと。
対象者を守るとともに、信頼関係を保ち、捜査当局や企業などが発表しない事実を報道するために不可欠な報道関係者の職業倫理とされる。
日本新聞協会の見解は「報道機関が何より優先すべき責務であり、記者にとっては究極の職業倫理」。
朝日新聞社は「朝日新聞記者行動基準」の中で「情報提供者に対して、情報源の秘匿を約束したとき、
または秘匿を前提に情報提供を受けたとき、それを守ることは、報道に携わる者の基本的な倫理である。
秘匿が解除されるのは、原則として情報提供者が同意した場合だけである」とする。
(2012-09-15 朝日新聞 朝刊 3社会)