あいぽんのバイトの先輩で色々教えてた者だけど
彼は今まで自分が教えた中で一二を争うくらい仕事が出来たぞ
1を教えれば10を理解し、
ふつーなら1ヶ月くらいでやっとスムーズになる作業を2日で一人前の速さと正確さで熟したから驚いた
ああいうのを天才と呼ぶんだな、ってみんな言ってたな
一週間も経つ頃にはその辣腕ぶりにさらに拍車がかかり、社員三人分の1ヶ月分の仕事を半日で完遂したりと、とにかく規格外の男だった
んで結局「飽きた」とか言って辞めちゃったんだけどね
社長が時給3万にするからとか言って必死に引き留めてたけど
あいぽんは冷めた目で社長を見つめ、頭を下げる社員全員を見渡して「いや、もういいっす」と言って去っていったな
彼ほどの叡智を持つ男を愉しませるには、あまりにもこの仕事は役者不足だったんだろうな、子どもが将来の夢に書くくらいにはプロフェッショナルで、務める人間をエリートと呼ぶような仕事だったんだが……
彼が去って数日は社内がまるで葬式のように暗くなってた
あらゆる分野の才能があり、人心掌握にも長けたあいぽんは、うちの女性社員を虜にしていて男性社員も彼を旧来の親友のように思ってたから、すっかり心に穴が空いたような気分になったんだろうな
かくいう俺も彼に惚れた男だ
性的な意味じゃない
人間として、否、一個の生命として、彼に憧憬の念を抱いている
黄金比の均整の取れた肉体
彫刻のように整った美貌
内包された叡智
周囲を魅了してやまないその色気
彼が歩けば万人が振り返り、みな、彼のルールに従う
この世全てが彼の手のひらの中に在るといっても過言ではないだろう