「……やえ、ざ、わ……」

 思わず。声が、零れ落ちた。
 地面に当たって跳ねもせず、ただ落ちて、落ちて、消えていく。無意味な音。
 ドア一枚を隔てて。八重沢は、風紀委員長は――隣の席の彼女は、男に媚びるように、伸ばした舌から涎を落としている。手は男の首に回され、性器は男のソレに擦り付けている。
 ぐちゃぐちゃ。くちくち。どれだけ濡れているのか、貪っているのか。水音はさっきよりも大きく。
 いつも凛々しい彼女は、男の舌に吸い付き、胸を押し潰すように押し付けていた。胸も臀部も大きいのに華奢な体。その背に男が腕を回すと、八重沢は目をとろけさせる。
 目が釘付けだった。情けなく、俺は既に射精していた。
 何も触れてないのに。心がナイフを叩き付けられたかの様に傷ついているのに。
 八重沢が好きだった、大好きだった! 可愛いし、優しいし、お茶目だし、笑顔が素敵だし、風紀委員長として頑張っているし、お淑やかだし、清楚だし、真面目だし、絵も上手いし……髪も綺麗だし、良い匂いもするし、胸もデカいし尻もデカいのにウエストは細いし――
 脳が彼女への想いで塗りつぶされる。視界がチカチカと明滅する。
 下賤な思いも青春の思いも憧れも尊敬も、ただただ好きだっていう、そんな思いも、

『……涼介くん……はやくぅ……』