花村萬月@bubiwohanamura

いきなり本の売れ行きの話です。ベストセラーになる本は、よい本ですか? 素晴らしい本ですか?

よい悪いではなく、ベストセラーになる本というのは、文章に行間のない本なんですよ。書かれてあること、そのまんま──がベストセラーの秘訣です。そんなことは物書きなら百も承知なんですけれどね。

コピペでも誤植でもでたらめでもなんでもいいんです。しょせん『一杯のかけそば(わからない人は検索してみてくださいね)』ですから。

ベストセラーというのは普段は本を読まない人、あるいは心のどこかで『日本語が不自由な日本人になりたくてしかたがない』ことに気付いている人に対して、行間を読まなくてよいお手軽を提供することで成り立つのです。

極論ですね。でも、案外的を射てるんですよ。だって『日本でいちばん日本語に不自由な出版社』にして『日本語に不自由な日本人を食い物にしてきた』素晴らしき出版社もどき『幻冬舎』さん、大繁盛ですもの。

理由、噛むのが面倒臭いから。そんな人にも食わせるのがベストセラーの凄さなんですよ。ただ物書きにも自尊心と自負心があるので、行間のない作品を書くのは逆に至難というか、自己同一性がじゃまをするのです。

ベストセラーを書いてしまう人(書けてしまう人)は、自分の才能のなかに行間がないということに気付いていない。悲惨なものですが、じつは当人は文学的であり、行間の鬼とでも思っているのでしょう。

経国済民がいつのまにやら経済と略されて物質的財貨(簡略化すれば食って糞するということです)の総体にまで貶められてしまったのですから、出版社にたくさん金を落としてくれる小説家は大切にされます。

ところでベストセラー作家は、たいがい文学コンプレックスを抱いています。出版社社長がいかにヨイショしてくれようが、それはそのベストセラー作家が稼いでくれる金銭に帰結して、作品それ自体の評価ではないからです。

では、お互いに『日本語が不自由で日本人になりたくてしかたがない』状態から脱するために、せいぜい歯応えのある本を噛み締めましょう。くれぐれも行間をよまなくてよいものに婬することのないように。日本人になれませんよ。
しかし一気に書いたら、疲れちゃった。校閲してません。