今日は少しあつい。
連日のバイトと動画編集でくたくたの体を無理やり動かしながら、私は登校する。
朝食は抜く羽目になったけど、今日もメイクはばっちりキメてきた。
私はギャルだからね。そこんとこはメンブレしかかっても怠らない。
そしていつものように、とびきりの笑顔を作って挨拶する。
「おはよー、なとりん!」
良かった。ちゃんと明るい声が出た。
「もちさん、おはようございます。また遅刻ギリギリじゃないですか!」
両手を腰に当てて、風紀委員長は正門の前で仁王立ちしている。
「間に合えばいつ来てもいいじゃん。セーフセーフ!」
「そういう問題じゃありません!余裕を持って行動することが大切なんです。心の余裕は風紀の……あれ?」
何やら言い淀んで、風紀委員長は少し怪訝な表情で私の顔を覗き込んでくる。
「もちさん、今日は体調が悪いんですか?」
あれ。私、変な顔してるのかな。
「そんなことないよー。めっっっちゃ元気だし!」
私は一オクターブ声を高くして、ガッツポーズをしてみた。
「朝ご飯ちゃんと食べてきましたか?」
「あ……忘れてたー、あははは!」
なんでバレたんだろう。
「駄目ですよ、しっかり朝も食べないと。私のお弁当少し食べておきますか?」
「いいよいいよ、大丈夫大丈夫」
「うーん、あまり無理はしないで下さいね?保健室に行くなら付き添いますから」
なんでここまで。
「ほんとに大丈夫だってー、あたしいつもノリで生きてるから!」
「そんなこと無いと思いますよ。もちさんが周りに気配りできる優しい人だって、私は知ってます」
なんでなんでなんで。
とっさに私は右手で風紀委員長のわき腹をくすぐった。
「んなぁっ!?もちさん、何するんですか!」
「んっふふふ〜、隙ありぃ!」
急いで彼女の横を駆け抜ける。
せっかくのメイクが崩れる前に、一気に教室まで走っちゃおう。
ああ、本当に今日は少しあつい。