ホラー川本「川夢」

気づくと電車に乗っていた。
私の座る席の左隣には男一人と女一人が座っている。
何故か席からは動けない。
ぽかんとしているとアナウンスが聞こえた。

「次は〜肉抜き〜、肉抜き〜」

変わった駅の名前だと思っていると、左側からアッアッアッとドスジャギィのような鳴き声が聞こえてくる。
そちらを振り替えるとそこには、川本恒平が立っていた。
川本は左端の男に口づけするとハンバーガーの肉だけを抜き取る吸引力で男の中身を吸いとっていく。

ジュルルルルルルルル

私は恐怖した。
男はみるみるうちに痩せ細り、川本はぶくぶくに太っていた。いや、太っていたのは元からだったかもしれない。

「次は〜粘着〜、粘着〜」

すると今度は川本は私のとなりの女性の耳元に口を寄せた。既にこちらまでミソサバスメルが漂ってくる。

ウタッテーイ…ウタッテーイ…ウタッテーイ…

ストーカー気質から繰り出す粘着質な呟きは6時間に渡り繰り返される。
既に女性はグロッキー状態だ。

私は息をのむ。
次は私の番だ。

「次は〜ケツエメ〜、ケツエメ〜」

私の前に立った川本がズボンをおろす。
私は動けない。
ただただひたすらに念じることしかできない。
目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ目よ覚めろ

川本はマイクを構える。
そして、ぶつぶつと何かを呟きはじめ……