しずといった)。先生は「おい静」といつでも襖ふすまの方を振り向いた。その呼びかたが私には優やさ
しく聞こえた。返事をして出て来る奥さんの様子も甚はなはだ素直であった。ときたまご馳走ちそうにな
って、奥さんが席へ現われる場合などには、この関係が一層明らかに二人の間あいだに描えがき出される