そんな彼らが自身の不遇を打破し、閉塞した人生に風穴を開けるには
儲かるのは一部分であると言われる相場に立ち向かいそこで成果をあげるよりほかにないのだ!

彼らは復讐しなくてはならない取り戻さなければならない。
自分をあざ笑った連中に目にモノ見せてやらなくてはならない。
彼らが味わった屈辱の痛みに見合うものはもはや普通の成功では許されない。
もちろん、それは確かに、身の程知らずの馬鹿げた行為である。

だが誰だってよほど幸運でもないかぎり自分の現状に不満のひとつぐらいはあるだろう。
社会では自分の得意とする分野、自分の望む分野を必ずしも活躍の場にできるとは限らない。
むしろ苦手とする分野それほど興味のない分野を仕事だからと割り切り妥協しながら一生を過ごす人々の方が大半だろう。

彼だってそういう人々と同様、不遇な状況を打破することを願い、リスクは覚悟でそんな無謀な道を選択したのではないだろうか。
そんな彼がいまさら後戻りをすることなどできない。できるわけがない。
いまさら、やっぱり自分には相場では活躍できませんでした、なんてことが許されるはずがない。

もはや彼の魂は相場で勝つことでしか救われない!
もしできなかったとしたらいままでの自分の人生はなんだったというのか。
費やしてきた年数と数千万というカネはなんだったというのか。
このまま終わっていいはずがない。
周りから変人として疎まれ蔑まれてきた人生、それが本当にそういう人生のまま終わってしまう。
そんな救いがたいことがあっていいはずがない!
だから、男は費やす。さらに費やし続ける。そして何年もの時間が過ぎ去る。
それでも、男の願いは叶うことはなくついには老人となり、病に倒れ、医者からもう長くないと告げられる……。