>>594
細かいことだけど写真評論において大事なことなので敢えて指摘すると、
写真表現上の主題とはテーマとかモチーフ、動機や理由や思想背景など、
表現者の心の中にあるもので、タイトルにもそのまま反映されることが多く、
それを具体化したものが画面上に実在するマチエールだ。

マチエールは写真でいう被写体であり、表現上の主役や脇役、背景、
ボケ、色彩、構図などが相当する。主要被写体は主役であることも多いが、
主題=メインの主要被写体では無い。主題はタイトルと絡めて、ストーリーや
ナラティブとしてマチエールを支える基礎になったり、伝達のコアとして見る
ものに作用する。材料とか材質を意味するマチエールは、英語でいうマテリアル
であり、オフジェクトでもある。

ディテールもマチエールに含まれ、写真本来の即物性を訴えるのに貢献するファ
クターでもある。作画の実際においては、主題にそぐわないマチエールは迷わず
切り捨てていく。絵画なら描かなければ済む電柱も容赦なく写るのが写真だから、
その場でさほど目立っていないと思っても、後からみると甚だ邪魔に思えること、
見えていなかったと気づくのはよくあること。

現場ではそれなりの緊張感を持って一切妥協の無い作画を心がけることは、
写真ゆえの苦しみであり、また写真ならではの醍醐味もそこにあると思う。