ジョブズがだまされたと気づいて強い態度に出るまでにずいぶん時間がかかっている。
ジョブズはひとを見抜く目があると自負していて、教え子のように接していた二人の若者に
まんまと一杯食わされたことを認めるのはプライドが許さなかった。
08年夏ごろジョブズは、アンドロイドを自分の目で見て確かめるために、
マウンテンビューのグーグルに乗りこみさえしたという。
グーグルは最初は無害に見える携帯電話を見せ、のちにすり替えるという
おとり商法のような手段で陥れたとジョブズは憤慨したのだそうだ。

長年ジョブズを取材してきたアイザックソンも見たことがない怒りようで、
特許を侵害されたとグーグルを訴えたジョブズは、彼らは泥棒だと次のように憤慨していたという。
「この悪を糺(ただ)すためなら、アップルが銀行に持つ440億ドルを残らずつぎこむつもりだし、
必要ならぼくが死ぬときの最後の一息だってそのために使ってやる。アンドロイドは抹殺する。
盗みでできた製品だからだ。水爆を使ってでもやる」。