【中居正広が高橋和也になる日】 特別寄稿 蛇荷元社

『え?なんで…』主演舞台が終わった翌々日、高橋和也は事務所が入居する雑居ビルでメリー喜多川の話に驚きを隠せなかった。
男闘呼組の中心メンバーとしてジャニー喜多川の寵愛を一身に受けていた高橋。男闘呼組は高橋以外は全員メリー喜多川のお気に入りで構成される稀有なグループ。
トップ会談でマッチの穴埋めとしてBMGビクターに預けられ、マッチ以上にヒットを連発して一時代を築いた。メイン作曲家のMark Davisは音楽プロデューサー小杉理宇造の盟友である馬飼野康二の変名である。

当時メリー喜多川は、弟とのシーソーゲームを楽しんでいたが、そこは女性だ。意地があった。
光GENJI、忍者、Smapとジャニーの色の強いグループがデビューしていき、何としても新人をデビューさせたい!そう思い定めていた。
とはいえ、彼女にも限界がある。全てのグループを取り仕切る彼女にとって、グループが増えるのは自分の仕事を増やすこと。
そこで、不要なグループを解散させるのもメリー喜多川が実行しなければならないことだった。少年隊を売り出すためにシブガキ隊を解体したように。
メリーは男闘呼組の解散を決意し、高橋以外のメンバーには内々にこうこうこうするからと説明があったという。
何も知らない高橋は、クスリをやっているという疑惑があることとファンに手を出したことを理由に契約の更新をしない旨、通告した。
『え?なんで…クスリなんてやってないよ。信じてください。』
高橋の言葉はメリーの耳には届くことはなかった。
そして、翌日には男闘呼組解散が報じられた。
メリーは、ソニーの酒井と連絡を取り合い、絶対に失敗できない新グループのデビューを目論む。
男闘呼組がかつて名乗っていた東京男組から、名前を拝借してグループ名はTOKIOである。メリーが命名し、メンバーの選抜もメリーが行った最初で最後のグループだ。
TOKIOデビューに先立って、メリーは旧知の脚本家井澤満にごり押しし、山口達也および国分太一を井澤原作のドラマ『同窓会』にレギュラー出演させた。
メリーにとってTOKIOは絶対に失敗できないグループだった。
ところが、TOKIOに熱心になるあまり、Smapの全てを部下の飯島三智に任せることとなってしまう。
そしてそのことがメリー喜多川最大の誤算になっていくのだった。