冬はあまり好きじゃない。
毎年毎年薄着のサンタ衣装で、煙突に押し込まれた挙げ句落下して。
サンタレースだって足の長い本願寺さんには全然勝てやしないし。
「もがみんはいいなぁ、暖かそうで…」
「え?でも家康ちゃんの方がサンタでかわいいよ、えへへ」
「ふぇっ」
もがみんはずるい。

そしてまたレースの日がやってきた。
「どちらがサンタにふさわしいか、勝負よ」
本願寺さん、そのセリフ何回目ですか。
もうわたしはいいからサンタ稼業に永久就職してほしいと思う。

「急いで〜!」
「むぐ、むぐぐっ」
今年もまた、おしりが引っ掛かってしまった。
この煙突はきっとわたしの体型に合わせて設計されているんだと思う。
「家康ちゃん、また負けちゃうよー!」
ぎゅむぎゅむとおしりを押し込んでくるもがみん。
ああ、太った子みたいでみっともないから早く落としちゃってほしいな。
そんなことをいつもみたいに考え始めた矢先のこと。

――ぷに、ぷに。
もがみんの指が、おしりじゃない『どこか』を強くつついていた。
「……ッ!?も、もがみんっ」
「どうしたのー?早く早く」
「や、どこ、触っ、ちょ」
――ぷに、ぷに。
くすぐったいような、鳥肌が背中からせり上がってくるような、知らない感覚。
首筋のあたりがぞわぞわして、むずむずして、身体から力が抜けてしまう。
頭がぼうっとしてきて、わけが分からなくなって、むずむずが強くなって…
――すぽん。
「よし、抜けた!」
「ふぎゃっ」
落下の痛みで意識が急速に戻る。そうだ、今はレース中だった。



「また負けちゃったねぇ…ん、どうしたの家康ちゃん」
身体がぽわぽわする。
眉を吊り下げてもがみんが何か言っていたけれど、わたしの耳には入ってこなかった。
するともがみんが心配そうに顔を覗き込んできたので、仕方なく正直に話すことにした。
「…おまたがむずむずする?」
「うわあぁ、大きな声で言わないで」
「風邪でも引いちゃったのかな、顔赤いし」
「も、もがみんっ」
おでこに掌をあてて熱を確認するもがみん。近い、近いよ。
具合悪くなんてなかったけれど、顔の熱がどこまでも上がってしまいそうな気がした。

「熱はないみたいだね、でも顔がさっきより真っ赤になっちゃった」
「だ、大丈夫、大丈夫だよっ」
「うーん、わかんない。何が原因なのかなぁ」

そんなの、もがみんのせいだよ!
…とは言えなかった。