時代劇が数多く作られる理由は、「視聴率が取れる」からである。
毎年、爆発的に大ヒットする傑作時代劇が生まれ、このジャンルは視聴者から根強い支持を受けている。必然的に、ドラマの中でも時代劇の割合が高くなる。
■『テバク』は典型的なファクション時代劇! 
チャン・グンソク主演の『テバク』の放送が韓国では終わったばかりである。このドラマは史実をベースに、大胆な解釈で朝鮮王朝時代の18世紀前半を描いていた。
粛宗、英祖、淑嬪・崔氏、李麟佐。登場人物は実在した人ばかりである。
ただし、主人公のテギルだけは架空の人物だった(一応、1693年に生まれて早世した粛宗の息子が実は生きていたという設定になっていたのだが……)。
このように、実在した人物の中に架空の人物を少し入れて物語を大きく見せるのをファクション時代劇という。
事実(ファクト)と創作(フィクション)を掛け合わせた造語である。『王女の男』が大ヒットして、ファクション時代劇が数多く作られるようになった。その流れを『テバク』も受け継いでいたのである。
実際、『テバク』はテギルがいることによって、粛宗や英祖といった実在の人物がより多面的な姿を見せることができていた。
■歴史の教訓が込められている
韓国人が時代劇を好むという点では、歴史好きが多いことも見逃せない。しかも、韓国では「歴史」は単なる学問や教養ではなく、むしろ教訓や生き方なのである。
そこには、韓国の成り立ちが決定的に影響している。朝鮮半島は20世紀になってから苦難続きだった。
1910年には日韓併合によって日本の植民地になり、その支配は1945年まで続いた。一旦は朝鮮半島全土で解放の喜びにひたったものの、それも束の間で、国家は南北に分断され悲惨な戦争も起こった。
こうした民族の悲劇をつきつめると、19世紀に孤立した状態で世界の大勢を見誤ったことが起因していた。その反省に立ち、韓国の人たちは歴史から多くの教訓を得ることが大切だと考えるようになった。
ここに、韓国で時代劇が好んで見られる下地がある。
もともと、韓国人はテレビドラマが大好きだ。様々な人間関係に深い興味を持つのが韓国の国民性であり、その人間関係を面白く描いてくれるドラマは最高のエンタテインメントなのである。
しかも、時代劇の場合、そこに教訓が散りばめられている。このジャンルが栄えるのも、韓国では必然である。