日本人とはいつたいなんだらうか? ひとはなんとでも云ふがいゝ。私は私もその一人だといふことを前提として、こんな結論を下してみる。
――日本人とはおほかた畸形的なものから成り立つてゐる人間で、どうかするとそれを却つて自分たちの特色のやうに思ひこみ、もつぱら畸形的なものそれ自身の価値と美とを強調する一方、
その畸形的なもののために絶えずおびやかされ、幻滅を味ひ、その結果、自分たちの世界以外に、「生命の完きすがた」とでも云ふべき人間の影像を探し求めて、これにひそかなあこがれの情をよせる人間群である。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44732_39410.html