同館が提供した個体の冷凍標本を台湾の研究者らが分析して発見に至ったことから、和名に同館の愛称「えのすい」が盛り込まれ、「エノスイグソクムシ(江ノ水具足虫)」となった。「えのすい」が含まれる和名は初めてといい、担当者は「驚きと共に、たいへん光栄。来館者に深海に広がる多様性に思いをはせていただけたら」と話す。
ダイオウグソクムシは、ダンゴムシと同じ等脚目で、体長約45センチにもなる見た目のインパクトと、絶食しながら何年も生きるなどの生態の不思議さで、日本の水族館の深海生物ブームを牽引(けんいん)してきた。同館はその立役者の一つで、担当の八巻鮎太さんによると、2007年から、メキシコ湾ユカタン半島沖の水深600〜800メートルで採集したダイオウグソクムシを、常時3〜4体飼育展示し、死んだ個体は標本として保存してきた。
19年、グソクムシの分類研究者として知られる国立台南大学の黄銘志(ホァンミィンチー)博士が来館し、依頼に応じて、標本2体を提供。その結果、全長26センチの1体がダイオウグソクムシとは異なる遺伝子情報や形態の特徴がある新種と分かった。学名は採集地にちなみ「バチノムス・ユカタネンシス」とされた。
同館では現在も同じメキシコ湾で採集した3体を飼育しており、今回の発見を受けて魚名板の表記を「エノスイグソクムシもしくはダイオウグソクムシ」に変更。生体での見分けは困難なことから、保管しているほかの標本のDNA分析などを進め、新種かどうかを調査していきたいという。(足立朋子)
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