0001しじみ ★
2020/06/04(木) 12:39:12.32ID:CAP_USER→作成した人工肝臓はヒト型の胆汁を分泌し尿素も生産できる
→人工肝臓をマウスに移植しても肝臓としての機能を発揮しつづけた
近年の急速なバイオテクノロジーの進歩により、人工臓器(オルガノイド)の作成が可能となりました。
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しかし、これまでの研究でつくられた人工臓器は実際の臓器よりも単純なつくりであり、特に肝臓のような、内部に小さな臓器(胆のう)を含む複合臓器の作成は困難でした。
そんな中、新しく行われた研究では、iPS細胞から胆のうや血管系を含めた、複合組織からなるミニ肝臓オルガノイドの作成に成功しました。
さらに、このミニ肝臓オルガノイドを免疫反応を抑制したラットに移植した結果、ラットの体内で正常に胆汁や尿素を生産することが確認されたとのこと。
今回の研究によって、人工臓器の培養レベルは新たな段階に進み、自分の細胞を培養すればいくつでも新しい臓器を作れるようになるかもしれません。
■まず皮膚細胞からiPS細胞を作り、iPS細胞から臓器の部品を作る
最初に研究者たちが調達したのは材料となる細胞でした。
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皮膚細胞からiPS細胞(万能細胞)が作られ、iPS細胞を分化させることで肝臓、胆管、血管といった臓器を構成する各パーツの細胞を作成できます。
iPS細胞から作られた臓器は遺伝子が自分のものであるため、生体外から移植を行っても拒絶反応は起こりません。
細胞を取り除いたラット肝臓(脱細胞肝臓)を型枠にする
次に研究者は材料である細胞を受け入れる型枠を用意しました。
型枠として選ばれたのは、全ての細胞を取り去ったラットの肝臓(脱細胞肝臓)です。
動物の臓器は細胞だけで構成されているのではなく、細胞から分泌されるコラーゲンなどのタンパク質によって形を保っています。
そのため、摘出した肝臓から細胞だけを溶かし出して除去することで、移植先のラットに適した型枠になり得るのです。
また細胞を洗い落とした型枠には、周囲にあった細胞の情報が残っているため、再充填された細胞をさらに細かく分化させる助けにもなります。
■細胞と型枠を組み合わせて培養し、ラットに移植する
材料となる細胞と、型枠となる細胞抜きの肝臓が用意されると、次に研究者は両者を組み合わせます。
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方法としては人工臓器作成では一般的な3D印刷技術が使われ、型枠の内部に胆管、血管、肝臓の細胞が立体的に組み合わせることで培養を可能にしました。
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通常、人間の肝臓の機能成熟には2年ほどかかりますが、興味深いことに人工の肝臓は1カ月ほどで大人の肝臓と同じ機能を持ち始めたそうです。
人工肝臓の培養が終わると、研究者たちは拒絶反応を抑制されたラットに移植を行い、生体内での機能を調べました。
その結果、移植されたヒトの遺伝子を持つ人工肝臓は、ラットの体内にあってもヒト型の胆汁を分泌し、肝臓の機能である尿素生産も正常に行っていることが明らかになりました。
複雑な構造の臓器を、たった1個の皮膚細胞から完璧に生産する今回の研究結果は、ドナー不足に陥っている臓器移植の未来を明るくしてくれそうです。
研究内容はアメリカ、ピッツバーグ大学の武石一樹氏らによってまとめられ、6月2日に学術雑誌「Cell Reports」に掲載されました。
Assembly and Function of a Bioengineered Human Liver for Transplantation Generated Solely from Induced Pluripotent Stem Cells
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(20)30688-4
https://nazology.net/archives/61593