→マイクロスポリディアMBは蚊にとって代謝と免疫力を高めてくれる益虫
→マラリアに対して蚊と共闘する未来が来るかも知れない
マラリアは人類が抱える最も深刻な感染症です。毎年2億人以上の人間に感染し、40万人以上の犠牲者(6割は五歳未満)を出しています。
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/05/e610d6cdab1dcf9d40e71ea6ffb05bb3.png
そのため人類の多くの努力がマラリアを媒介する、蚊を殺すことに注がれてきました。
しかし今回、国際的な研究チームにより、蚊を殺すのではなく蚊をマラリア感染から守る予防法が考案されました。
蚊がマラリアに感染していなければ、蚊に刺される人間もマラリアに感染しないからです。
その鍵となったのは、蚊にとって益虫であるマイクロスポリディアMB(微胞子虫)とよばれる微生物でした。
最もマラリアが蔓延している地域ですら、マイクロスポリディアMBに感染していた蚊の体内には、マラリアの病原体が発見されなかったのです。
しかもマイクロスポリディアMBは蚊の卵巣に寄生するために、人間の関与なしに、世代を超えて蚊の体内に存在し続けることができます。
もし全ての蚊をマイクロスポリディアMBに感染させることができれば、人類はマラリアを永遠に終息させることができるかもしれません。
ですがマイクロスポリディアMBは、どうやって蚊をマラリア感染から守っていたのでしょうか?
■不思議な寄生生物が蚊の体内にいた
マラリアのもたらす犠牲者は極めて多く、そのほとんどが子供です。
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/05/Fibrillanosema_spore.jpg
そのため人類は長年に渡りマラリアとマラリアを媒介する蚊を根絶させるための研究を続けてきました。
しかし研究を進めるうちに、研究者たちは不思議な現象に気付きました。
マラリアの蔓延が最も深刻な地域ですら、マラリアに感染していない蚊が最大9%も存在していたのです。
研究者たちは、蚊がマラリア感染から逃れる理由を探るため、未感染である蚊の体内を詳しく調べました。
その結果、感染を逃れている蚊の体内からは共通して、マイクロスポリディアMB(微胞子虫)と呼ばれる微生物が発見されました。
マイクロスポリディアMB(微胞子虫)は単一真核細胞からなる菌類ですが、寄生生活が長く続いたせいで真核生物であるながらミトコンドリアを失ってしまったという、極めて不思議な生物です。
またマイクロスポリディアMBは、蚊の卵巣への寄生を通して卵の中に潜み、世代を超えて蚊の体内で存在し続けることも判明しました。
■マラリア感染から蚊を守る仕組みは「ライバル殺し」
中央にいる色の濃い2匹がマラリア病原虫。虫とついているが単細胞生物である。周囲の丸い円は赤血球。マラリアは赤血球に感染する/Credit:wikipedia
研究者は次にマイクロスポリディアMBがどのようにしてマラリア感染を防いでいるかを調べました。
その結果、マイクロスポリディアMBを体内に持っている蚊は、持っていない蚊に比べて遺伝子の活性度が高いく、盛んにタンパク質を生産していることがわかりました。
そのためマイクロスポリディアMBを持っている蚊は成長が早く、高い回転率で次世代を生み出すことができます。
また特に活性が高かった遺伝子の中には、抗菌作用のあるタンパク質が含まれていました。
このことからマイクロスポリディアMBは、蚊の免疫力を高める益虫だったことがわかりました。
自分を殺す作用のある抗菌物質の生産を加速させることは、マイクロスポリディアMBにとって不利なように思えますが、自分が殺される以上にライバルの寄生体が死ねば、最終的に宿主の体を独占することができます。
その排除されるライバルの中には「マラリア」も含まれていたのです。
マイクロスポリディアMBを使ったマラリア排除は、蚊にとって自然なだけではありせん。
マイクロスポリディアMBを使ったマラリア排除は対決の構図を「人類」VS「マラリア+蚊」から「人類+蚊」VS「マラリア」に変更することができます。
そして対決構図の変化は、今まで敵として殺してきた蚊(特に蚊の免疫力)を人類の味方に引き込むことを可能にします。
人類と蚊は長年の敵でしたが、マラリアに対しては共闘が実現するでしょう。
https://nazology.net/wp-content/uploads/2020/05/87a3ed19ede2186cfd4151a0224bfc1b.png
続きはソースで
https://nazology.net/archives/59044