雌雄産み分け 簡便、安価に 新手法 牛、豚で成功 広島大と大分県
2019/8/14
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 広島大学と大分県農林水産研究指導センター畜産研究部は、簡単で安価な雌雄産み分け方法の開発に成功したと発表した。ほとんどの哺乳類に使え、同じ技術で牛と豚の両方で雌雄産み分けができる。雌雄の精子の仕分けが早く大量にできるため、研究チームは「実用化すれば、畜産業界に簡便で安い新たな雌雄選別が可能となるのではないか」としている。

 研究チームは世界で初めて、雌を作るX精子と雄を作るY精子の間で、機能に差があることを実証。これを利用し、X精子とY精子を仕分け、雌雄産み分けにつなげた。

 一般のワクチンに使われている免疫性を高める薬品が、X精子のしっぽにだけ特異的に結び付き、精子の泳ぎを抑えることが分かった。ヒトも含め、ほとんどの哺乳類のX精子は同じ反応を見せる。樹脂製の試験管に入れた精液にこの薬品を混ぜると、X精子は沈み、Y精子はそのまま泳ぎ続けて精液の上に集まる。これを利用してXとYを仕分けた。

 牛の凍結精液を融解して培養、薬品を混ぜてX精子の精液とY精子の精液を分離した。Y精子の精液で雄が生まれる体外受精卵を作り、受精卵移植をしたところ、狙い通り雄子牛が生まれた。

 豚でも同じ手法で精液を雌雄に分離。Y精子の液状精液で人工授精をしたところ、11頭の産子のうち雄が8頭生まれた。70%以上の確率で狙った性が生まれれば実用的と考えている。

 現在、牛で普及してきた性選別精液は、精子の比重で雌雄を分ける。米国製の専用機械を使い、ライセンス契約が必要。処理時間がかかるため、精子数が多い豚では雌雄の仕分けができない。

 開発した技術は、大量に短時間に精液の仕分けができる。X精子と反応させる薬品は一般のワクチンに利用される安価な物質。牛の凍結精液なら30分、豚の液状精液だと2時間ほど反応させると仕分けられる。

 研究チームは当面、牛では人工授精より体外受精卵の生産に利用していく考え。特別な機械や米国のライセンスを持たずに雌雄別の受精卵が生産できる。民間の人工授精所や県での利用を想定する。

 豚では液状精液での利用を考えている。狙った性別の豚が生産しやすいため、種豚生産が効率的になる。また快適性に配慮した家畜の飼養管理(アニマルウェルフェア)の観点から去勢がしにくくなっているため、肉豚生産を雌に特化すれば対応できるという。

研究内容は13日付(現地時間)の米国科学誌「プロス」に掲載された。