高濃度の女性ホルモンにさらされた胎児は自閉症になりやすい可能性があることが判明
https://gigazine.net/news/20190802-estrogen-linked-autis/
2019/8/2 19時00分
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200名以上の妊婦の羊水に含まれるホルモンを解析した大規模な研究により、「高濃度の女性ホルモンは自閉症リスクに関係がある」ということが判明しました。

Foetal oestrogens and autism | Molecular Psychiatry
https://www.nature.com/articles/s41380-019-0454-9

High levels of estrogen in the womb linked to autism -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/07/190729094538.htm

これまでの研究から、自閉症は男性の方が女性よりも3〜4倍も発症率が高いことが知られており、また胎児期の男性ホルモンが脳の男性化に関与していることなどからも、「男性ホルモンと自閉症の関係性」を調べる研究は盛んに行われてきました。

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ケンブリッジ大学の自閉症研究センターに勤めるサイモン・バロン=コーエン教授らの研究グループも、子宮内の羊水中に含まれる2つの男性ホルモンを含む、4つの出生前ホルモンのレベルを測定した研究を2015年に実施し、男性ホルモンのレベルが高い男児は出生後に自閉症と診断される可能性が高いことを突き止めています。しかし、バロン=コーエン教授らが女性ホルモンに注目して行った新たな研究では、女性ホルモンも自閉症との関わりが深いことが判明しました。

研究グループはまず、10万人以上の妊婦から羊水サンプルを採集しているデンマークのバイオバンクから、出生後に自閉症と診断された男児98人分の羊水サンプルを取り寄せて、4種類の女性ホルモンの濃度を調べました。その後、自閉症を発症しなかった177人分の羊水のホルモンレベルと比較をしたところ、自閉症患者の羊水では4種の女性ホルモン濃度が有意に高かったとのことです。

以下の4つ図は、サンプルから検出されたエストリオール(左上)・エストラジオール(右上)・エストロン(左下)・硫酸エストロン(右下)の4つの女性ホルモン濃度を対照群(各図の左)と自閉症のグループ(同右)とで比較したもので、図の縦軸は濃度の高さを示しています。どの種類の女性ホルモンも、自閉症を発症しなかった左のグループより、自閉症を発症した右のグループで多く検出されていることが見てとれます。

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研究グループは、「『女性ホルモンは女性的な性質と関係が深い』という一般的なイメージとは逆に、多くの哺乳類では女性ホルモンも脳の男性化に関与しています」と指摘し、男性ホルモンだけでなく女性ホルモンもまた胎児の脳の発達に強い影響を及ぼしているとの見解を述べています。

研究を主導したバロン=コーエン教授は「今回得られた知見は、出生前の性ホルモンレベルの増加が自閉症の潜在的な原因であるという説を支持するものです。こうしたホルモンの働きと、遺伝的要因とが相互に作用して、胎児の脳の発達に影響しているのだと考えています」と語りました。

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また、論文の共著者であるアレクサ・ポール氏は「自閉症における女性ホルモンの役割はほとんど研究されていなかったので、この発見には興奮しています。今回の実験では、男性の自閉症患者しか対象にしていないので、次は女性の自閉症ではどうなのか確かめる必要があります」と話し、今後の研究への意欲と期待を示しました。