Implicit violent imagery processing among fans and non-fans of music with violent themes | Royal Society Open Science
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsos.181580
マッコーリー大学のウィリアム・フォード・トンプソン教授率いる研究チームは同大学に所属する32人のデスメタルファンと48人の非デスメタルファンを被験者として実験を行いました。実験は「両眼視野闘争」という現象を利用したもの。両眼視野闘争は、「2つの目でそれぞれ異なる画像を見た場合、最初はどちらか一方の目で見た画像だけが認識されるものの、時間がたつと入れ替わるようにしてもう一方の画像が見える」という現象をいいます。
実験ではまず、被験者に「一般的な画像」と「暴力的な画像」を順番ずつ普段通り両目で見てもらい、その後に2つの画像を片目ずつ同時に被験者に対して見せました。片目ずつ画像を見ているとき、「両眼視野闘争」によって被験者は暴力的な画像と一般的な画像が入れ替わるように見えており、「現在、どちらの画像が見えているか」をボタンで伝えてもらいました。
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実験の最中には「暴力的な音楽」と「ポップな音楽」をそれぞれ聴いてもらい、「画像の見え方」に音楽が関係しているのかを調査しました。今回の実験には、声や曲の音程などが生物学的に攻撃的で、歌詞もカニバリズム的なものだったスウェーデンのデスメタルバンドBloodbathの「Eaten」と、「伝統的な曲構成」「子音の反響」「高い音程」などポジティブな感情を与える要素を持ち歌詞も楽しげだったファレル・ウィリアムスの「Happy」がそれぞれ選ばれました。
画像に写っているのがスウェーデンのデスメタルバンドBloodbath
デスメタルとは対照的に、聴くとポジティブな感情になるというファレル・ウィリアムスの「Happy」は以下から確認できます。
Pharrell Williams - Happy (Official Music Video) - YouTube
https://youtu.be/y6Sxv-sUYtM
実験の結果、デスメタルファンが非デスメタルファンと比較して、暴力的な画像に反応しやすいということを裏付ける証拠は見つかりませんでした。この結果は「『暴力的なコンテンツ』に接している人は暴力的である」という偏見への反論になり得る可能性があります。また、非デスメタルファンは「Eaten」を聴いているときには暴力的な画像を、「Happy」を聴いているときには一般的な画像を選ぶ傾向がある一方、デスメタルファンは聴いている音楽に左右されにくい傾向が見られました。非デスメタルファンは「Eaten」を低く評価して「Happy」を高く評価しましたが、デスメタルファンは「Eaten」も「Happy」も同じくらい高く評価したため、画像の見え方に影響が出た可能性があると考えられています。
研究の結論として、暴力的な音楽を聴く習慣があっても暴力的な画像に対して反応が変わるわけではないが、聴いている音楽から想起される感情によって、暴力的な画像への反応性が変化する可能性があると述べられています。
https://gigazine.net/news/20190314-violent-music-doesnt-inspire-violence/