カリフォルニア大学サンフランシスコ校の科学者たちが、ノースカロライナ大学の研究者たちと共同で世界最大のバーチャル薬理学プラットフォームを開発し、プラットフォームを用いて非常に強力な新薬を同定できることが明らかになりました。このバーチャル薬理学プラットフォームは、これまで自然で見つけられず、合成もされてこなかったなかった10憶種類以上の仮想分子を含んでおり、既存の創薬プロセスを劇的に変化させるだけでなく、製薬業界にも大きな影響をおよぼす可能性が示唆されています。

Ultra-large library docking for discovering new chemotypes | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-0917-9

‘Virtual Pharmacology’ Advance Tackles Universe of Unknown Drugs | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2019/02/413236/virtual-pharmacology-advance-tackles-universe-unknown-drugs
https://i.gzn.jp/img/2019/03/14/virtual-pharmacology/01.png

カリフォルニア大学サンフランシスコ校が開拓した「原子スケールの分子イメージング」技術および「バーチャル薬理学」の急速な発展により、重要な生物学的標的の化学構造を解明し、何百万種類もの薬物分子(薬物治療に応用できる分子)が標的とどのように結合するかを迅速にシミュレートすることが可能となりつつあります。これにより、物理的に合成したりテストしたりするすることなく、効果的な医薬品候補となる物質の同定が可能となるそうです。

研究者たちは存在する可能性のある物分子の数は宇宙に存在する観察可能な原子の数に近づくと推定していますが、既存の創薬データベースに収録されている薬物分子の数はせいぜい数百万種類程度です。そこで、バーチャル薬理学と分子イメージング技術を使い、既存の創薬データベースよりもはるかに多くの薬物分子を用いて、従来の方法よりも格段に豊富な新薬を同定可能となるプラットフォームを作成することで、創薬プロセスを劇的に進化させる可能性があります。

そんなアイデアに目を付けたカリフォルニア大学サンフランシスコ校の製薬化学科で教授を務めるブライアン・ショイチェット氏と、非常勤の准教授であるジョン・アーウィン氏は、ウクライナの化学サプライヤー「Enamine」と共同でバーチャル薬理学の知識と分子イメージング技術を用いて「バーチャル薬理学プラットフォーム」を開発し、科学誌のNatureで発表しています。

Enamineは、過去10年間にわたって1分子当たり100ドル(約1万1000円)程度のコストで、これまで存在しなかった数多くの薬物化合物を生成してきた企業。何万種類もの標準的な化学的構成要素を、数百種類以上の化学反応を用いて互いに組み合わせることで、1億種類以上の薬物化合物をオンデマンドで生産する効率的な手法を構築しています。

ショイチェット教授とアーウィン准教授は、Enamineと提携することで手に入れた膨大な数の仮想薬物化合物に関するデータを「ZINC」と呼ばれる無料の創薬データベースに組み込みました。ZINCには記事作成時点で7億5000万種類を超える仮想の薬物化合物データが収録されており、Enamineやほかのサプライヤーが日々新しいデータを追加しているため、その数は時間が経過するにつれて増加するものと推定されています。

研究チームは「ドッキング」と呼ばれる手法を用い、Enamineの仮想薬物化合物データを計算薬理学的アプローチと適合する3次元化学モデルに変換。これにより、データベース内に収録されている「何億種類もの仮想薬物データ」と「特定の生物学的標的」がどのように結合するかを3Dで迅速にシミュレートできるようになったそうです。

これまでの指数関数的な成長率から、ZINCは2020年までに合成されたことのない化合物10憶種類以上の3Dモデルを含むようになると予測されています。研究チームは「我々のプラットフォームは現在、一般的な薬物スクリーニングライブラリで利用可能な分子の100倍以上の分子をスクリーニング可能です。分子の多様性は今後も増加し、すぐに1000倍以上の分子をスクリーニングできるようになるでしょう」と話しています。

続きはソースで

https://gigazine.net/news/20190314-virtual-pharmacology/