筑波大学などのグループは、スケトウダラのゼラチンを使って、手術用の接着剤を開発した。肺の切除手術を受けた傷跡に使うと、ヒトの血液から作った従来の接着剤よりも強度が強く、呼吸したときに空気が漏れないという。

 肺がんの手術で、肺を切除した傷跡は、糸で縫い合わせても空気漏れを防ぐことができないため、現在はフィブリン接着剤を使っている。この接着剤はヒトの血液から作られているため、生体には優しいが、強度が低いうえ、呼吸時の肺の動きについていけない(追従性)という点で問題があった。
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■温める必要なし すぐ使える

 そこで、筑波大の佐藤幸夫教授と国立研究開発法人「物質・材料研究機構(NIMS)の田口哲志グループリーダーらは、スケソウダラから採取したゼラチンをもとに呼吸器外科専用の接着剤を開発した。

タラなどの冷水魚は、豚や牛などのゼラチンに比べて、低温でもゼリー状になりにくく、液体状態を保つことから、手術時に外科医が温める必要がなく、すぐに接着剤として使用できる特性がある。
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■従来品より高い強

 実験用の豚から摘出した肺で試した結果、肺が3倍近くに膨らんでも剥がれることがなかったうえ、直径10ミリの穴をふさいだときにも、従来の接着剤の1.4倍に相当する強度を示したことから、咳をしたときの気道内の圧力変化にも十分耐える可能性が期待されるという。

 グループは「患部に塗ってから5秒以内に硬化し、生体組織の修復に伴って、体内で分解・吸収される特徴がある」として、今後、動物を使った臨床試験で安全性の確認を進め、実用化を目指すとしている。

 なおこの研究成果は、米学術誌『Annals of Thoracic Surgery』に18日付で掲載された。
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ハザードラボ
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