■愛らしい顔が印象的なスローロリス。ほかの動物に違うメッセージを送っている

 テディベアのような目、ボタンのような鼻、レッサーパンダとナマケモノを合わせたような顔――ジャワスローロリスは、その愛らしさは一ニを争うと言ってもいい動物だ。ところが、人間の目にはかわいらしく映っても、ほかの動物は、スローロリスの顔を危険を警告する信号として受け取っている可能性がある、という。

 スローロリスは東南アジアに生息する小型のサルで、霊長類で唯一毒を持つ。毒は唾液に含まれており、ひじの内側にも毒腺をもつ。

「唾液とひじの2つの毒を混ぜると、毒性はさらに強くなります」と英オックスフォード・ブルックス大学の保護生物学者、アナ・ネカレス氏と話す。

 恐ろしい武器を持つ一方で、スローロリスは体が小さく動きも遅い(スローロリスのスローは「遅い」からついた)。これがスローロリスの戦略だ。自分が危険な存在であることを、他の動物に知らせることができれば、争いに巻き込まれることはないからだ。

「こうした戦略をもつ動物は多いです。たいてい、自分の強さや優位性を示すために色を使います」とネカリス氏は言う。

 こうした色を「警戒色」という。警戒色をもつことで知られる動物は多様だ。スカンクやアナグマなどの哺乳類、鮮やかな色をしたヤドクガエルもそうだ。意外なところではテントウムシも毒をもつ。

■若い個体ほど目立つ顔

 ネカリス氏らが先日、学術誌『Toxins』(2019年2月5日付)に発表した論文によると、8年かけて200体以上のスローロリスを「キャッチ・アンド・リリース方式」で調査した結果、ジャワスローロリスの顔の模様が警戒色の基準に合うことが判明したという。

 スローロリスの顔を見てみよう。顔の模様は、一番危険な部位である口に注意を引き寄せるようになっている。これはイヌワシ、ニシキヘビ、オオトカゲ、オランウータンといった、スローロリスの捕食者の視覚に高い効果を発揮する。この発見が私たちに教えているのは、ほかの動物たちには当たり前の話に過ぎないということだ。

 ネカリス氏はスローロリスを「愛らしく、小さな、ふわふわとした『死の毛玉』」と表現した。

 ネカリス氏らは、研究を通じて、スローロリスの別の特徴も見つけた。若い個体は年長の個体よりも攻撃的だというのだ。

 25年間スローロリスを研究してきたネカリス氏は、長年スローロリスの年齢による行動の違いを感じていた。2歳以上の成体は一般に捕獲しても暴れない。しかし、若い個体(1〜2歳)は注意が必要だ。

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