■膵臓がんの新たな腫瘍マーカーを発見

従来の腫瘍マーカー検査に、新たに別のマーカー検査を併用すると、膵臓がんの検出率が向上し、高リスク患者の早期発見に有用な可能性があることが、米ヴァン・アンデル研究所のBrian Haab氏らによる研究で明らかになった。

研究の詳細は「Clinical Cancer Research」1月7日オンライン版に掲載された。

膵臓がんの多くは初期症状を伴わないため診断が難しく、発見されたときには既に進行した状態であるケースも多い。そのため、5年生存率はわずか8.5%にとどまるとされる。

膵臓がんの代表的な腫瘍マーカーには糖鎖抗原のCA-19-9が挙げられ、血液検査で血中の量を測定する。

しかし、この検査は膵臓がんの確定診断や経過観察の際に行われるもので、検診には用いられていない。

また、この腫瘍マーカー単独では、膵臓がんの約40%しか検出できないとされている。

Haab氏らの研究チームは今回、CA-19-9とは異なる膵臓がん細胞の一群から分泌される「sTRA」と呼ばれる糖鎖抗原に着目。細胞株や患者由来の異種移植片、原発腫瘍におけるsTRAおよびCA-19-9の発現量や分泌を調べた。

その結果、CA-19-9を産生、分泌しない腫瘍細胞からsTRAが産生されることが確認された。また、CA-19-9とsTRAの腫瘍マーカーを併用すると、CA-19-9単独に比べて膵臓がんの検出率が向上することが分かった。

これらを併用した場合の膵臓がんの検出率は70%で、偽陽性率は5%未満であったという。

Haab氏らは「これら2つの腫瘍マーカーを併用すれば、単独の検査では見落とされてしまう可能性がある膵臓がんを検出できる確率が高まる」と説明している。

そのため、同氏は「これらを組み合わせることで、がんが広がる前の段階で高リスク患者の膵臓がんを発見し、早期に治療できるようになるのでは」との見方を示している。

同氏らによれば、この新しい検査法で、がんの高い検出率を達成できれば、特に膵臓がんリスクの高い患者の検診と早期介入に有用なアプローチとなる可能性がある。

なお、高リスク患者には、膵臓がんの家族歴がある患者、膵嚢胞や慢性膵炎の既往がある患者、中年期以降に2型糖尿病と診断された患者などが含まれるという。

Haab氏は「互いを補完する方法でこれらの検査を用いれば、医師は早い段階で膵臓がんを発見でき、患者の生存率の著しい改善につながるものと信じている」と期待を示している。

Haab氏らの研究チームは、これらの検査の併用による有効性を確認するため、さらに研究を実施していくとしている。

(参考情報)
Abstract/Full Text
http://clincancerres.aacrjournals.org/content/early/2019/01/11/1078-0432.CCR-18-3310

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