【1月31日 AFP】20万年前にユーラシア大陸の森林を歩き回っていた希少種の初期人類デニソワ(Denisova)人が、道具や装身具を製作していた可能性があることが、30日に発表された最新の研究結果で分かった。

 デニソワ人の存在は、2010年にロシア・シベリア(Siberia)南部にある洞穴の科学調査で採集された女児の指の骨が、分析によって、それまで同定されていなかった人類種に属することが判明したことから確認された。デニソワ人は初期人類ネアンデルタール(Neanderthal)人と近縁関係にあることも分かっている。

 デニソワ人はこれまで、デニソワ洞穴(Denisova Cave)でしか発見されていない。このため、よく知られている近縁種のネアンデルタール人に比べ、分かっていることがはるかに少ない。ネアンデルタール人は集団で高度な戦略を練って狩りをしたり、火を起こしたり、道具や装身具を作ったりしていた。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された2件の論文で二つの国際研究チームは、デニソワ人が洞穴に居住していた年代は20万年前までさかのぼると主張している。

 論文の執筆者で、英オックスフォード大学(University of Oxford)放射性炭素加速器部門(Radiocarbon Accelerator Unit)を統括するトム・ハイアム(Tom Higham)氏は、AFPの取材に「試料となるヒトの骨自体が極めて小さいことが難題だった。最大のものでも2センチの大きさで、これで年代を決定するのはかなり難しい。なぜなら試料の骨はすべて、放射性炭素年代測定法のちょうど適用限界かそれに及ばない範囲に入るからだ」と語った。

 放射性炭素同位体の半減期を用いて有機物の年代を明らかにする炭素年代測定法は、最高でおおよそ5万年前の検査サンプルに対してしか信頼できる測定値が得られない。

 ハイアム氏と研究チームは、過去の調査では見つかっていなかった骨の断片をいくつか発掘し、その一つからDNAサンプルを採取することに成功した。

 研究チームは次に、入手可能な炭素データに加え、堆積物の年代測定、ゲノム(全遺伝情報)の変異率、考古学的情報などで構成される数理モデルを使用し、デニソワ人がその名前の由来となった住居に住んでいた時期を、かなりの確信を持って特定した。

「デニソワ人が洞穴から姿を消したのは、20万年前から恐らく約5万年以上前までとみられる」と、ハイアム氏は述べた。

■装身具や道具

 研究チームはヒトの骨の他、首飾りとして使われていた可能性のある穴の開いた動物の歯や、骨で作った道具、ダチョウの卵の殻でできたビーズ、石を加工した腕輪などを発見した。こうした遺物はみな、かつては現生人類にのみ関連付けられていたが、最近になってネアンデルタール人との関連が指摘されている。

 遺物が見つかった洞穴の周辺には、他のホミニン(ヒト族、類人猿を除く現生種と絶滅種の人類を表す用語)の骨は存在しないため、デニソワ人が作ったとするのが「最も説得力のある説明」だと、ハイアム氏は指摘する。

「最も古い(遺物の)年代は4万9000年前にさかのぼる。ユーラシア大陸全体とまでは言えないが、ユーラシア大陸北部における、これまでに得られているこの種の活動を示す最古の証拠となる」とハイアム氏は説明する。

 研究の裏付けが得られれば、人類の祖先がどのようにして生き延び、社会化したかということに関する従来の考えが、今回の結果によって一変する可能性がある。

 デニソワ洞穴は、最近では2018年8月、ネアンデルタール人の母親とデニソワ人の父親を持つ「デニー(Denny)」が発見されたことで大きく取り上げられた。デニーは、これら初期人類の間で異種交配が行われていた初の証拠となった。

 今回の研究チームによると、デニーが現れたのは10万年前頃と考えられる。これは、ネアンデルタール人とデニソワ人が、約4万年前に絶滅するまで数万年の間、異種交配を行っていた可能性があることを意味するという。(c)AFP/Patrick GALEY

■デニソワ人の骨片。オックスフォード大学提供(2015年6月14日撮影、2018年8月22日入手、資料写真)。
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