道路のカーブミラーや車のサイドミラーのように、壁の向こうや曲がり角の先など見ることができない場所にあるものを見えるようにする技術は古来から開発されています。しかし、潜水艦の潜望鏡のように高感度のセンサーとハイテク機器を駆使したアイテムは複雑な上にコストが高過ぎるため、実生活への応用は難しいものがあります。そんな中、ボストン大学の研究者が、「壁に映る影」を解析することで、見えない位置にあるモニターに映った画像を普通のデジタルカメラを使って撮影することに成功したと報告しています

Computational periscopy with an ordinary digital camera | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0868-6

Scientists Used an Ordinary Digital Camera to Peer Around a Corner | Smart News | Smithsonian
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/scientists-used-camera-corner-180971331/

ボストン大学の研究者は、以下の図のように、白い壁の前にデジタルカメラを設置し、同じく白い壁に面するようにLCDスクリーンを配置しました。さらに、カメラと画像の間には壁を挟み、万が一にも画像がカメラに映り込まないようになっています。
https://i.gzn.jp/img/2019/01/25/scientists-used-camera-corner/a01.jpg

壁が白く見えるのは、壁が反射された光をあらゆる角度で散乱し、すべての光の色が混合しているためです。そして、壁の向こうにあるLCDスクリーンから放たれる光も白い壁に当たり、画像の「半影」が壁に投影されます。研究チームは長時間の露光撮影を行って、デジタルカメラで白い壁に映る半影を捉えました。

カメラはLCDディスプレイがどこにあるのか分からないため、白い壁を解析して半影が投影されている場所を推測。そして、ぼんやりとうつった半影から赤・緑・青(RGB)の3色を識別し、アルゴリズムによって解析することで、LCDディスプレイに表示された画像を再現します。
https://i.gzn.jp/img/2019/01/25/scientists-used-camera-corner/a02.jpg

実際に再現している様子をまとめているのが以下の画像。一番左がLCDディスプレイに表示された画像で、左から2番目にあるものが検出された半影、そして右3つ画像が解析を重ねた結果出力された画像。解析を重ねるごとに精度は上がっている様子がよくわかります。特に、キノコと帽子を被った少年の半影は人間の目で見るとほとんど違いはないのですが、1度目の解析で既にキノコと少年の区別はできている様子。
https://i.gzn.jp/img/2019/01/25/scientists-used-camera-corner/a03.jpg

論文著者の一人であるVivek Goyal氏は「私たちの技術は従来のハードウェアを使っています。携帯電話用のアプリを用意する可能性も考えているかもしれません。私たちが使ったカメラは携帯電話のカメラと基本的に違いはありません」とコメント。また、「この新しい技術の最も可能性が高い用途の一つに自律走行車があります。駐車中の車の死角に子どもがいるかどうかを判別したり、街の交差点で自分に見えない部分の情報も捉えることができるでしょう。それは楽観的かもしれませんが、不合理ではありません」と述べていました。

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190125-scientists-used-camera-corner/