東京電力福島第一原発事故直後、子どもの甲状腺被曝ひばくを防ぐための安定ヨウ素剤を配布した福島県三春町で、ヨウ素剤の服用を指示されながら、実際は服用しなかった0〜9歳児が4割弱に上ったことが分かった。事故後の服用の実態が判明したのは初めて。ひらた中央病院(平田村)などの研究チームが10日、発表した。

 原発事故で放出される放射性ヨウ素が子どもの体内に入ると、甲状腺に集まって内部被曝を引き起こし、がんの発症原因となる。ヨウ素剤を正しく使えば被曝を防げるが、服用実態は詳しく分かっていなかった。

 三春町は事故の4日後、40歳未満の人か妊婦のいる世帯にヨウ素剤を配布し、防災無線などで服用指示を出した。同病院の西川佳孝医師らは、事故当時0〜9歳で、2017年に甲状腺検査を受けた961人にアンケートを実施。ヨウ素剤を服用したのは63・5%の610人にとどまっていた。理由を聞いたところ、「安全性への不安」が46・7%と最多だった。「配布後すぐ避難したため」(10・3%)や「国や県の指示ではなかったため」(9・7%)という回答もあった。

 原発事故後、住民にヨウ素剤の配布と服用指示を行ったのは三春、大熊、双葉、富岡の4町にとどまる。研究チームの坪倉正治・県立医大特任教授は「国際的にも例がない調査だ。将来の原子力災害に備える際、子どもや保護者にヨウ素剤の効果や副作用などをきちんと事前説明する必要がある」としている。

読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190111-OYT1T50056.html