理化学研究所(理研)開拓研究本部伊藤ナノ医工学研究室の上田一樹研究員、伊藤嘉浩主任研究員らの研究グループ※は、両親媒性ポリペプチド[1]でナノサイズの筒状構造体を作製し、その中に抗がん剤を入れ、筒の両端を半球でキャップした「魚雷型ナノカプセル」を開発しました。

本研究成果は、がん治療をはじめとするさまざまな薬剤体内輸送用カプセルや細胞内への核酸輸送用カプセルとしての応用が期待できます。

アスペクト比[2]を持ったロッド状材料は、高い血中滞留性や細胞内輸送性、細胞内でのエンドソーム[3]脱出性を示すことなどが報告されており、ロッド状のカプセル開発が期待されていました。しかし、ナノサイズでロッド状の中空構造体を作ることは困難であり、これまで達成されていませんでした。

今回、研究グループは、両親媒性ポリペプチドで形成される筒状構造体の存在下で、球状構造体を作る両親媒性ポリペプチドを自己集合化させることで、ロッド状の魚雷型ナノカプセルの作製に成功しました。サイズは筒状構造体と球状構造体に由来しており、筒状構造体の部分は加熱によって伸長させることができ、さまざまな長さのナノカプセルを調製できます。また、この魚雷型ナノカプセルは、球状カプセルと比較して、細胞内に素早く多量に取り込まれやすいことを示しました。さらに、抗がん剤を内包して担がんマウスに注射することで、腫瘍患部へ素早く薬剤を輸送し、抗がん効果を発揮させることにも成功しました。

本研究は、米国の国際科学雑誌『ACS Nano』掲載に先立ち、オンライン版(1月4日付け)に掲載されました。

■今後の期待
これまでにも、アスペクト比を持つロッド状の材料が、球状の材料とは異なる組織集積を示すことが報告されています。本研究で開発した「魚雷型ナノカプセル」を用いることで、従来の球状カプセルでは困難であった、がん治療をはじめとするさまざまな薬剤体内輸送用カプセルや細胞内への核酸輸送用カプセルとしての応用が期待できます。

■図 魚雷型ナノカプセルの設計と薬剤輸送
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理化学研究所
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