「選択と集中」は商売人の発想。基礎研究には合わない。

・大隅教授

「『こうやれば必ず結果が出ます』というのは科学ではありません。わからないことに挑戦してみようという精神を失ってはいけない。
 成果がありそうなところに集中投資ばかりしていたら、新しい研究の芽が生まれてくることはないと思います。
 これから日本からノーベル賞受賞者が続々と生まれるかというと、だんだん難しくなってくると思います」

「このままいくと、ある世代が抜けてしまうことになる。『ああ、しまった』と後で気づいても、それを取り返すには、何倍も時間がかかってしまう。
 ある分野が途切れてしまうと、それをもう1回立ち上げるのにはものすごく時間がかかるのです。
 長期的に見ると、日本の基礎科学は大変、危機的な状況になっていると思っています」


・本庶教授

「僕は、(基礎研究費を)もうちょっとばらまくべきだと思う」

「何が正しいのか。何が重要なのかわからないところで、『この山に向かってみんなで攻めよう』ということはナンセンスで、
 多くの人にできるだけ、たくさんの山を踏破して、そこに何があるかをまず理解したうえで、どの山が本当に重要な山か、ということを調べる」

「(イノベーションは)政府が旗を振ってするものではない。政府がこれをしなさいあれをしなさい、と言うのは全くばかげている。役人が考える程度のことは誰だって考えている。
 月にロケットを上げるような、計画を立てて金をかければできることはイノベーションではない。金で解決することとイノベーションは次元が違う」

「目的が決まった研究費はイノベーションを生むお金の使い方ではない。研究者を型にはめてしまうため、とんでもない発想を生み出せないからだ。
 がん免疫薬につながったPD―1遺伝子の研究も自由な発想から始まった。最初からがんに効くと考えた人は誰もいなかったが、結果的にイノベーションを起こした」