在来の生態系に影響を及ぼすおそれのある「特定外来生物」に指定されているアライグマの目撃が都心で相次いでいる。10月中旬には東京・赤坂の繁華街に出没し、深夜の捕物劇を繰り広げた。環境適応能力が高く、餌が豊富にある都心でも増殖している可能性がある。かわいらしいしぐさで子供たちにも人気の動物だが、野生のアライグマは感染症を引き起こす恐れもあり、専門家は計画的に駆除していく必要があると指摘している。(久保まりな)

 10月17日、東京都港区赤坂5丁目の交番に「アライグマがいる」と通行人から届け出があったのは午後8時20分ごろ。出動した赤坂署員が街路樹にいるアライグマを見つけ、いったんは捕まえたが、逃走。その後、消防も出動するなどして、付近は騒然となり、繁華街は報道陣ややじ馬たちでごったがえした。

 東京都自然環境部によると、都内のアライグマ捕獲数は右肩上がりに増えている。平成28年度は過去最多の599匹で、18年度の77匹から大幅に増加した。近年は23区内でも捕獲されるようになった。環境省が今年8月に公表した調査では、アライグマの分布域は全国で10年前の3倍に広がり、生息が見られなかったのは秋田、高知、沖縄の3県だけだった。

 アライグマは北米原産。昭和52年にアライグマを主役としたアニメ「あらいぐまラスカル」が放映されると、一躍人気を集め、ペット用に大量に輸入された。しかし、成長するにつれて気性が荒くなるため飼育は難しく、捨てられたり、飼育施設から逃げ出したりして野生化。平成17年には、特定外来生物に指定され、現在は、学術研究などを除き、輸入や飼育は禁じられている。

 北海道大の池田透教授(60)=保全生態学=は、アライグマについて、「環境適応能力が高いので、都市部にいても不思議ではない」と話す。繁殖期は春から初夏にかけてで、1匹のメスは平均で3、4匹、多い場合で7、8匹の子供を産む。雑食性で生ゴミなどを食べることから、都心でも河川や下水道などを利用して、生息地が広がっている可能性がある。

 野生化したアライグマはニホンザリガニなど絶滅危惧種を捕食するほか、農作物被害や人への感染症被害も懸念されている。そのため、池田教授は対策が急務とし、「どのくらい捕獲すればよいのかを科学的根拠に基づいて算定し、各自治体などがきちんと目標を立てて減らしていく必要がある」と指摘している。

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