掃除機やエアコンのフィルター、あるいはコーヒーのフィルターなどは「大きな物体をせき止めて小さな物だけ通す」という働きがあるのは誰もが知るところ。しかしそれとは逆に「大きな物だけ通す」という不思議なフィルターが開発されました。用途としては、「ハエだけが通れないフィルター」や「トイレの防臭フィルター」などが考えられるようです。

Free-standing liquid membranes as unusual particle separators | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/4/8/eaat3276
https://i.gzn.jp/img/2018/10/08/improbable-membrane/00_m.jpg

This improbable membrane can trap flies in a jar—and odor in a toilet | Science | AAAS
http://www.sciencemag.org/news/2018/08/improbable-membrane-can-trap-flies-jar-and-odor-toilet

フィルターの概念を完全に180度ひっくり返す「真逆フィルター」を開発したのは、ペンシルベニア州立大学の科学者らによる研究チーム。通常のフィルターは、表面に開けられた小さな隙間の大きさを変えることで通過できる物体の大きさを変えていました。一方、研究チームが開発したフィルターは、液体の「表面張力」を利用することで、一定の大きさと運動エネルギーを持つ物体だけを通過させることを可能にしました。


実際にそのフィルターが機能している様子は以下のムービーで見ることができます。

This improbable membrane can trap flies in a jar—and odor in a toilet - YouTube


コーヒーのフィルターは、粒子の大きなコーヒー豆は通さず、コーヒーを抽出した水(お湯)だけを通すことで、透明なコーヒーが飲めるようにしています。


一方、ペンシルバニア州立大学の研究チームが開発したのは、コーヒーフィルターの正反対「大きな物だけを通す」という特殊なフィルターです。


新しいアイデアのもととなったのは、人間の体にある細胞が細菌やウイルスなど一定の大きさを持つ物体だけを細胞内へと取り込むPhagocytosis(食作用)の様子でした。


この特殊フィルターを作るのに必要なのは、針金で作ったリングと非イオン化された水、そして発泡剤や洗浄剤の材料として用いられるラウリル硫酸ナトリウム(SDS)です。


このフィルターが機能する原理は、物体の運動エネルギーの違いを利用するというもの。一定の高さから落とされた物体は落下による運動エネルギーを持つようになります。この時、大きくて重い物体はより大きな運動エネルギーを持つようになり、液体の表面張力に打ち勝って液体の膜を通過することができるようになります。そして、物体が膜を通過した後は、物体が通過したことで開いた穴は液体の高い表面張力により自動的に閉じられてしまいます。


このフィルターの特徴はさらにあります。それは、表面張力の高い液体でできているために、非常に耐久性が高いというもの。実験段階では、フィルターに異物を繰り返し与え続ける試験を行ったところ、3時間たってもフィルターの機能は全く損なわれなかったとのこと。


これまでにはないフィルターが誕生することが期待されます。たとえば、固体の排せつ物は通す一方で、気体のガスは通さないようにすることで、全く新しいトイレの防臭装置が生まれたり……


外から大きな物は入れられる一方で、コバエは通れないフィルターなど。


また、外科手術の際には、開口部を外気にさらさないまま手術器具を使えるようにするという用途も考えられるとのこと。


そして、このフィルターには「遮断した物体を自動で集めて取り除くことができる」という便利な性能も備わっています。

https://i.gzn.jp/img/2018/10/08/improbable-membrane/01_m.jpg

■動画
This improbable membrane can trap flies in a jar—and odor in a toilet https://youtu.be/Rod7nmKSWF0

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20181008-improbable-membrane/