慈悲的差別の研究における疑問の1つは、「なぜ女性は慈悲的差別を好むのか?」ということ。そして、可能性のある答えとして「親の投資理論」が挙げられています。

雄は繁殖のためにわずかな性細胞を提供すれば事足りますが、女性にとっての生殖の成功は、数カ月におよぶ妊娠とその後の授乳に左右されます。人類の歴史において、食べ物を届けて天敵から自分を守ってくれるつがいを選ぶ能力は、生殖を成功へと導くものでした。親の投資理論によると、このことから、女性は自分に労力やお金などを費やす行動を取るつがいを好む心理的傾向が作られたとのこと。男性のがっしりした体格や、現代における財力などは、この能力を示すものとして考えられます。

2018年に発表された研究では、18歳から73歳までの女性700人が「コートを預かる」「重い荷物を持つ」といった慈悲的差別の行動を示す男性のプロフィールを読み、その後、男性を評価するという実験が行われました。この時、女性被験者たちは男性の行動について「積極的な保護」「供給と献身」「恩着せがましい」といった点で評価しました。

この結果、女性は慈悲的差別を取る男性について「恩着せがましい」「パートナーを弱くさせる」と見ていたものの、同時に「魅力的」だと感じていたことが判明しました。

「この研究結果は、古い性役割を受け入れている人以外にも適用されるのだろうか?」と考えた研究者は、被験者のフェミニスト度合いを測るテストの結果を考慮して再調査を実施。この結果、フェミニスト度合いが強い人は男性の慈悲的差別を「恩着せがましい」「パートナーを弱くさせる」と強く評価する傾向にあることが示されましたが、それでもなお男性を「魅力的」と評価していたとのことです。

ジェンダーが大きくニュースで取り上げられる現代において、女性は騎士道精神に従う善意の男性の行動をどう受け止めればいいのか混乱しているように見える、と研究者は語ります。ただし、慈悲的差別とされる行動が実際に有害かどうかはその背景に左右され、たとえば女性の同僚を恩着せがましい方法で助ける男性は女性の能力を害しますが、一方で、家で重い家具を運ぼうとする女性を助けることは有害だとは考えられません。このニュアンスを理解することこそが、女性に善意からくる行動を拒絶するよう求めずに、慈悲的差別のネガティブな影響を減らすことができるとGül氏は述べました。

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GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180921-benevolently-sexist/