【8月31日 AFP】
地球温暖化が世界に与える悪影響がまた一つ、研究によって明らかになった。腹を空かせた昆虫が増加しているのだ。

 30日に発表された研究論文によると、気温の上昇が昆虫の食欲を増進させ、コムギ、コメ、トウモロコシなどの主要穀物に害を及ぼすという。これら3種の穀物で、世界の人々が摂取するカロリーの42%を占めているため、わずかでも少なくなれば、特に貧困地域で食料不足や紛争が起きる恐れがある。さらに気温の上昇によって一部の昆虫では、繁殖ペースが速まる傾向があるという。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文の共同執筆者で、米バーモント大学(University of Vermont)研究員のスコット・メリル(Scott Merrill)氏は「気温が上がると、害虫の代謝が上昇する」と説明する。「害虫は代謝が上昇すると食べる餌の量が増えるため、作物に害が及ぶことになる」

 作物にどの程度の害が及ぶ可能性があるのかを明らかにするため、研究チームはさまざまな緯度の地域に生息する昆虫38種について、気温による代謝率と成長率の変化を追跡するシミュレーションを行った。

 結果には地域差があり、寒冷な地域ほど食欲旺盛な害虫が増加する可能性が高い一方、熱帯地域では被害がある程度軽いと予想された。

 論文によると、全体としては「世界の穀物収穫高の減少量は、地球の平均表面温度が1度上昇するごとに10〜25%増加すると予測される」という。

 現在、世界のコムギ生産の最多地域である欧州では、害虫に起因する年間生産高の減少量が1600万トンに上る可能性がある。また欧州11か国の害虫によるコムギの損失量は、現在に比べて75%以上増加すると予測されている。

 世界最大のトウモロコシ生産国の米国では、現在の温暖化傾向が続けば、昆虫に起因するトウモロコシの損失量が40%増加する可能性がある。

 世界のコメ生産の3分の1を占める中国では、年間2700万トンに及ぶ損失が発生する可能性がある。

■「常識外れの」アブラムシ

 特に危険な害虫とされるロシアコムギアブラムシのケースを考えてみよう。ロシアコムギアブラムシは非常に小さな昆虫だが、侵略的外来種とみなされている北米では、1980年代に初めて確認されて以来、重大な脅威となっている。

 メリル氏によると、カナダや米国ではこのアブラムシの雄は一匹も確認されていない。雌が無性生殖を行い、基本的に「自分自身の生きたクローンを産んでいる」ようだと、メリル氏はAFPの取材に語った。「このアブラムシは胎生で、子は発育した状態で生まれる。そればかりか、子が生まれる時にはすでにその体内で孫にあたる個体が発育している。常識を超えている」

 同氏によると「このアブラムシは、理想的な温度条件の下では非常に速やかに繁殖することが可能」で、1日に8匹のペースで子が産まれるという。「理想的な条件下では1〜2匹のアブラムシが、1兆匹になる可能性さえある。個体数の増加ペースの速さは常軌を逸している」

 研究チームは今回のシミュレーション結果が、環境に放出する殺虫剤の量を単に増やすのではなく、暑さと病害虫に強い作物の選択や輪作など、各地域により即した解決方法を模索するきっかけとなることを期待している。(c)AFP

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