1960年代から1970年代にかけてNASAが行ったアポロ計画では、全部で6回の月面着陸に成功し、
月面から岩石を持ち帰るなどの成果を上げました。
そんなアポロ計画の実験データを記録した磁気テープのうちいくつかは「紛失した」とされていましたが、
過去の磁気テープから「月面の温度観測データ」が新たに復元され、
科学者を悩ませてきた「不可解な現象」の解明に役立ったと報じられています。

Examination of the Long‐Term Subsurface Warming Observed at the Apollo 15 and 17 Sites Utilizing the Newly Restored Heat Flow Experiment Data From 1975 to 1977 - Nagihara - 2018 - Journal of Geophysical Research: Planets - Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2018JE005579

Apollo: Recovery of lost mission tapes solves lunar mystery - CNN
https://edition.cnn.com/2018/07/09/us/apollo-moon-landings-study/index.html

1971年に月面へ到達したアポロ15号に搭乗した宇宙飛行士と、
1972年に月面到達を果たしたアポロ17号の宇宙飛行士らは、月の地下の温度を測定するために、
月面地下数メートルに温度測定器を埋めました。

月面着陸の計画は1972年を最後に打ち切られましたが、
月面の地下に埋められた測定器は観測データを1971年からアポロ計画終了後の1977年まで、送信し続けていたとのこと。
月から送信された月の地下温度を観測したデータは、NASAが管理する磁気テープに記録されたとされています。

測定器を埋めるという実験は、月がどのようにして本体の熱エネルギーを失っていくのかを観測し、
月内部での地質学的活動を調査する目的で行われました。
ところが、1974年に測定器はマイナス16.7度からマイナス15.7度までの不可解な温度上昇を観測し、
研究者らは「いったいなぜ、月の地下で原因不明の温度上昇が発生したのか?」という謎に直面したとのこと。

1974年から数十年にわたって、多くの科学者らが頭を悩ませてきたにもかかわらず、
近年になるまで多くの支持を集める有力な仮説は提唱されてきませんでした。
その理由として、「温度上昇が観測された翌年の1975年から1977年にかけての温度観測データが、
NASAから紛失してしまった」というものがあります。

本来、月から送信されてきたデータは磁気テープに記録され、科学者らによってアーカイブされていました。
ところが、1975年から1977年にかけての観測データは適切にアーカイブされておらず、
どこに磁気テープがあるのかわからない状態になっていたとのこと。
2010年ごろからNASA内で「紛失した磁気テープ等のデータを復元する」計画が発足し、
ようやく1975年4月から6月までの磁気テープがWashington National Records Centerから発見され、
残りの観測データを含む磁気テープもLunar and Planetary Instituteから発見されました。

発見されたテープは非常に古いものだったため、データを読み取り可能な状態まで復元するために、
科学者らは数年にわたって慎重な復元作業を行い、ようやくデータの復元に成功したそうです。
月の温度上昇に関する論文の執筆者でLunar and Planetary Instituteの研究者でもあるウォルター・キーファー博士は、
「月で発生した不可解な温度上昇について、
今回復元された観測データを考慮することでより適切な解釈を下すことができます」と述べています。


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GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180711-lost-tapes-solve-lunar-mystery/
続く)