がんを引き起こす遺伝子は、もともと植物にあったものが人類に「飛び移った」可能性があるとする研究論文がこのほど発表された。

 いわゆる「ジャンピング遺伝子」に関する世界最大の分析調査によって、
L1として知られる遺伝因子が約1億5000万年前に人類の祖先に入り込んだことが新たなデータで示され、
その極めて重要な役割が明らかになった。

 この外来遺伝因子はとりわけ活発だったことが判明しており、その後の人類の進化に急激な変化の多くをもたらした。
一方、この遺伝子を持つことがなければ、人類は死に至る多数のがんを引き起こす深刻な遺伝子変異とは無縁だったかもしれない。

 長い年月の間にL1因子は人間の遺伝子情報であるヒトゲノムに存在するようになったが、
それがどのように種を越えて「飛び移った」のかを正確にたどることは不可能だ。

 しかし豪アデレード大学(University of Adelaide)の研究チームは、それが植物や昆虫、
あるいは後に絶滅した別の種に由来する可能性があると考えている。

 L1因子は、ほ乳類の主要な三つのグループの一つでカモノハシやハリモグラなどが属する単孔類にはみられないことから、
ほ乳類に由来するものではないというのが同研究チームの見解だ。

 研究を率いたデービッド・アデルソン(David Adelson)教授は、
正式にはレトロトランスポゾンと呼ばれるジャンピング遺伝子が与えた影響は、
純粋な親子間の継承プロセスとされていた人類の進化に関する理解を根底から覆したと語った。

 同教授は「ほ乳類ゲノムにL1因子が組み込まれたことが、
過去1億年にわたるほ乳類の急激な進化における重要な推進力だと考えている」
「ジャンピング遺伝子は自身の遺伝子情報をコピーし、他の種のゲノムの内外にペーストする」と説明し、
「その方法はまだ解明されていないが、ダニや蚊などの昆虫やウイルスが関係している可能性もある」
「いまだに大きな謎だ」と述べた。

 ここ数十年にわたるがん研究の発展により、
人が病気を発症するリスクにおいて遺伝子が果たす役割の重要性がこれまで以上に明らかになっている。

 がんの正確な遺伝的特徴を把握することにより、医師は患者のがん発症リスクをより明確に予想することができ、
ひいては乳腺切除といった予防措置を取ることも可能になってきた。また腫瘍やその他のがんが見つかった場合、
個々の患者に合ったテーラーメイド医療を提供できる領域も広がっている。

 アデルソン教授は、「ジャンピング遺伝子はパラサイト(寄生生物)のようなものだと考えている」と言い、
「DNAの中に何があるかということはあまり重要ではない。
ジャンピング遺伝子が他のゲノム内に侵入し、遺伝子の混乱を招き、何らかの調整が行われたことは事実だ」と述べた。

 専門誌ゲノム・バイオロジー(Genome Biology)に掲載された本論文では、750種以上の遺伝子情報が研究されている。

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