仮説の根拠の裏付けとなるような化石が発見されていない。

本説が提唱された20世紀中盤にはヒトの祖先についてほとんど知られていなかったが、
20世紀末から発見されだした人類の祖先化石と推測されるいずれの物も水棲説を支持していない。

『ミッシングリンクの時代には海水面が高く、アフリカ大陸は北部の大部分が沈んでいた。
人類の祖先はこの時に海辺で生活し、海水面が元通りになると陸生活に戻った。』
↑アフリカ北部の大部分が水没していたとすると、体の構造上泳げないキリンを始め、多くの動物の分布・存在が説明できない。

人間にも泳げない人がたくさん存在する。むしろ、ヒトは「訓練しないと泳げない」例外的な動物である。

類人猿程度の遊泳能力の動物が海や湖に入るのは、サメやワニの捕食対象になるだけである。

水棲哺乳類は総じて脚の退化が見られる。

陸上で胴体を引きずらずに歩行できる水棲哺乳類(森林棲のコビトカバを祖先にもつカバ以外)には、密生した短い毛が全身にある。

鼻孔を閉じる能力がない。

猿人・原人化石の中には、死後に遺体が水に没したために水成層から出土するものもあるが、多くは陸成層中から発見される。

水棲動物ではよく発達している瞬膜(水から目を守る膜)が、人間では完全に退化している。

『水中に入ると心拍数が減る現象「潜水反射」が人間にも備わっている。』
↑潜水反射自体は、人間以外の哺乳動物にも普通に見られるものである。

ヒトは顔に水が触れると交感神経が興奮する。モーガンの主張と正反対の現象が起こる。

『ケニアの湖で死因がビタミンA過剰症と見られる原人の化石が発見された。膨大な量の魚を食べていたと考えられる。』
↑魚の食べ過ぎで死んだのなら魚食に適応していなかった有力な証拠である。
「ビタミンA過剰で死んだ」とされる原人については、
「致死量のビタミンAを含む肉食獣の肝臓を食べたのが原因である」とするのが古人類学者の定説である。

水生哺乳類が水に入ると心拍数が下がるのは、
人間によって強制的に陸に揚げられたイルカやジュゴンが水に戻された時の事を述べただけで、潜水反射とは無関係である。