そもそもの話として、この研究の解析手法はDNAバーコードとして使われているmtDNAのCOT領域が
「中立的な分子進化」をすることを前提としている。
「どれだけ進化した?」を比較することで解析している。
研究結果が示していることは進化論が正しいか正しくないかではなく、
どのような進化が起きたのか(断続平衡説の裏付け)であり、
現代進化論の総合説のうち中立説が正しいことは議論以前の問題になっている。

・線引されているのは生物集団総体ではなく中立的な多様性。
 同一ルーツからDNAバーコードという共有の遺伝的領域がどれだけ変化してきたかを解析しているのだから、
 「個別のルーツから発生」と解釈すること自体がおかしい。

・「20万年前に既存生物が同時発生」とは一切書かれていない。
 APDからの推定値として多様性が成立(母集団から多様性パターンを受け継がない形で子集団が分岐)
 したのが10〜20万年以内という推定で、進化イベントが特定期間に集中しているのではなく、
 そもそも進化速度が急激に増加するインターバルが10〜20万年と短いことを示唆している。

・特殊なイベントがなくても、「中間段階の痕跡が非常に残りにくくなるような、
 多様性パターンに断絶が見られる」=「中立的な進化速度に急激な増減が見られる」=「集団サイズが急激に増減する」
 という理論は断続平衡説と言って40年以上前からある主力な説。

DNAバーコード解析で見られるような「断絶」はいわゆるボトルネック効果や創始者効果を裏付けるもの。
離島やネイティブアメリカンのABO式血液型の頻度が母集団から「断絶」するのと同じこと。