時計2018/6/11 19:55
 肝臓や胃、心臓、膵臓などほぼ全ての内臓器官の形が左右非対称となる仕組みの一端を解明した、と神戸大学と大阪大学の研究グループが11日、発表した。
ハエの腸が対称の状態からねじれる際の細胞の動きを初めて確認。臓器再生医療への応用が期待される成果で、12日付の英科学誌「イーライフ」に掲載される。

 神戸大大学院医学研究科の本多久夫客員教授や大阪大大学院理学研究科の松野健治教授らの研究グループは、卵の中にいるショウジョウバエの後腸(ヒトの小腸と大腸)に着目。
従来の標本観察により、成育する際に左回りへ90度ねじれて対称性が崩れる一方で、一つ一つの細胞の形はゆがみがなくなって左右対称になることは分かっていたが、細胞の動きは謎だった。

 細胞に蛍光タンパク質を組み込んで光らせる方法で生体観察。後腸が左回りにねじれる際、個々の細胞はそれぞれ接する細胞に対して少しずつ位置を変え、左方向へ滑るようにずれる現象を確かめ、「細胞スライド」と名付けた。

 さらに、後腸が右にねじれる突然変異体で調べたところ、個々の細胞は右方向へずれていた。この結果から、細胞スライドは後腸がねじれる方向に起きることが裏付けられたという。

 大阪大大学院理学研究科の稲木美紀子助教は「細胞スライドで臓器形成の原理を説明できるかもしれない。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)などで臓器を造形する過程で、正常な機能を持たせることに応用でき得る」と話している。(佐藤健介)
https://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201806/0011344416.shtml