遺跡や化石などの歴史的資料が発見された際、
その資料がいつ頃のものなのかを調べるためにさまざまな方法で年代測定を行います。
動植物の遺骸である場合は放射性炭素年代測定という手法が多く用いられるのですが、最近の研究によって、
調査する地域によってデータの誤差修正が正確に行われないのではないかと、
科学ジャーナリストのマイク・マクレー氏が指摘しています。

A Crucial Archaeological Dating Tool Is Wrong, And It Could Change History as We Know It
https://www.sciencealert.com/radiocarbon-dating-ancient-levant-region-calibration-inaccuracies

大気中に存在する炭素(C)には、放射性同位体のC14がわずかながら存在します。
このC14は約5730年の半減期でベータ崩壊を行い、窒素(N)になっていきます。
自然界の大気中にも存在するため、生物にも一定の割合でこのC14は取り込まれ、
生きている限りは体内でのC14の割合は維持されます。しかし、生物が死ぬ、つまり生命活動をストップすると、
C14が取り込まれなくなってしまうため、体内のC14は少しずつベータ崩壊で減少していきます。
放射性炭素年代測定は、試料の中にC14がどれだけ壊変しているかを調べることで、
その試料がいつ頃のものかを測定するというものです。

この放射性炭素年代測定の要となるのが、大気中のC14の量の変動です。
長い年月の中で大気中のC14の量は変動した可能性もあり、計測結果には誤差が生じてしまいます。
そのため、「較正曲線」と呼ばれるチャートに基づいて誤差を修正する必要があります。
この較正曲線にはINTCALと呼ばれる国際プロジェクトで作られた較正曲線が用いられ、
このINTCALの較正曲線も定期的にバージョンアップが行われています。
2018年6月時点で最新のバージョンであるINTCAL13は、
約5万年前までの正確な年代測定が可能となる較正曲線だとのこと。

しかし、このINTCAL13は基本的に北アメリカとヨーロッパの過去のデータに基いているものであり、
地域によって放射性炭素の割合が大きく異なるために正しい年代が測定できないのではという主張があります。
コーネル大学の考古学者であるスタート・マニング氏は、
イスラエル・ヨルダン南部・エジプトというレバント南部の木の年輪を調査し、
木に含まれるC14の割合と年輪による年代測定を行ったところ、
少なくとも西暦1610年から1940年にかけてのデータは
INTCAL13とおよそ19年ほどの誤差が生じていることが明らかになったと論じています。

マニング氏は「私たちの調査結果は、
考古学者の研究の根本が崩れてしまっているために議論の余地があるということを示しています。
少なくともレバントにおいては正確ではない放射性炭素年代測定を行っていることになります」と語っています。

レバントは聖書考古学の調査対象となる地域であり、今でも出土品や資料の年代について論争が絶えません。
数千年も昔のものを扱う考古学において、19年という誤差はまるで小さいように思われますが、
放射性炭素年代測定結果からスタートしているダビデの王国の年代についての
議論が解決する手助けにはなるでしょうと、マクレー氏は述べています。

https://i.gzn.jp/img/2018/06/08/radiocarbon-dating-calibration/a03.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180608-radiocarbon-dating-calibration/