東北大学(東北大)は、研究用モデル植物であるシロイヌナズナに強い光ストレスを与えると、
膜の傷を蓄積した一部の葉緑体が大きく膨張し、
そのような異常葉緑体だけがオートファジーに選び取られ除去されるプロセスを解明したと発表した。

同成果は、東北大学学際科学フロンティア研究所の泉正範 助教、同大学院生命科学研究科の日出間純 准教授、
中村咲耶氏、同大学院農学研究科の石田宏幸 准教授、
岡山大学資源植物科学研究所の坂本亘 教授らの研究グループによるもの。
詳細は米国の学術誌「Plant Physiology」に掲載された。

植物が成長するために欠かせない光合成反応は、「葉緑体」と呼ばれる植物細胞内の小器官で行われている。
光合成は、太陽光のエネルギーを利用して行われている一方で、
葉緑体は、太陽光に含まれる過剰な光エネルギーによるダメージを常に受けている。

このようなダメージは、乾燥や高温、栄養不足といった他のストレスが加わると深刻化することが知られており、
そのような複合ストレスが世界の作物生産量を大きく減少させているという報告もある。
こうした背景もあり、植物の光ストレス耐性機構を解き明かしていくことは、
今後ストレス耐性の高い作物を作り出していくために必要とされていた。

泉 助教らは2017年、光ダメージを受けた植物の葉で、
「オートファジー」と呼ばれる機構で葉緑体が積極的に消化されることを発見しており、
この現象は「クロロファジー」と名付けられている。

今回の研究は、未解明であったクロロファジーが起こるプロセスの解明を目的として行われたもの。
その結果、強い光ダメージを受けると一部の葉緑体が大きく膨らむことを発見し、
これは葉緑体を取り囲む膜がダメージを受けることで、
葉緑体の中と外の浸透圧バランスが崩れてしまっていることが原因であることを証明した。

また、時間変化を追った顕微鏡観察によって、膨らんだ葉緑体だけが選び出され、
液胞と呼ばれる不要物を消化する細胞内器官に運ばれる過程を捉えることに成功した。
その過程は、これまで植物で観察されていたオートファジーのプロセスとは異なり、
液胞の膜そのものが分解物を外側から包み込む「ミクロオートファジー」と呼ばれる現象に似たプロセスであることが明らかになった。

今回の成果を受けて研究グループは、
今後、オートファジーが壊れた葉緑体だけを選び取る仕組みの詳細を明らかにすることができれば、
オートファジーを制御し植物体内での葉緑体の新陳代謝をコントロールすることによって
環境ストレス耐性や作物生産能力の向上を図る研究を展開できると説明している。

画像:膨張した葉緑体の観察画像
https://news.mynavi.jp/article/20180606-639990/images/001.jpg
画像:膨れた葉緑体が運ばれるプロセスの観察画像
https://news.mynavi.jp/article/20180606-639990/images/002.jpg

マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20180606-639990/