一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」(石田瑞穂会長)は16日、
優れた女性科学者に毎年贈る今年の「猿橋賞」を、
地震発生の仕組みを分析する独創的手法を開発した名古屋大学講師の寺川寿子(てらかわ としこ)さんに授与すると発表した。
猿橋賞は今年で38回目。

寺川さんは東京都出身。早稲田大学教育学部で数学を学んだ後、1993年に民間シンクタンクに入社。
2001年に退社後東京大学大学院理学系研究科に入学、06年に同研究科博士課程修了。
同研究科で研究を続けた後、10年に名古屋大学大学院環境学研究科に移り助教、
15年から同研究科・附属地震火山研究センター講師。

授賞理由は「地震活動を支配する地殻応力と間隙(かんげき)流体圧に関する研究」の成果。
寺川さんは、地震を引き起こした断層のすべり方のデータ分析から、
地震を起こす応力場のパターンを合理的に推定する新しい手法を開発。
大地震で誘発される地震に、この圧力の変化が関係していることなどを示した。
この手法を用いて東日本大震災後に内陸部で発生した余震のメカニズムを合理的に説明できることも示したという。

寺川さんは所属する名古屋大学大学院研究科附属地震火山研究センターのホームページで
「地震は地殻内に蓄えられた応力を断層運動によって一気に解放する物理過程です。
地震の発生メカニズムを理解するためには地下に働く応力状態や断層の破壊強度を知ることが重要です。
しかし、これらの物理量は現在よくわかっていません。
私は数値計算・データ解析・地震観測を通じて地殻の応力状態や断層の強度を推定することを目指しています」とコメントしている。

「女性科学者に明るい未来をの会」によると、
寺川さんは社会に出てから東京大学大学院で地震学の研究を始めるまでに10年近くのブランクがあった。
このためにさまざまの困難に直面しながらも、学界常識にとらわれない独創性豊かな研究を続けた。
寺川さんの研究成果について同会は「地震発生物理の解明と地震発生予測に向けた研究に質的な発展をもたらすもので
今後地震災害の軽減に貢献することが期待される」などとしている。

画像:寺川寿子さん
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