月の起源は諸説ありますが、そのなかでも現在もっとも有力とされるのは、
原始的な地球に小天体が衝突し、
その小天体の破片とえぐり取られた地球の一部がひとつに集まって月になったとする巨大衝突説です。

しかし今週、AGU(アメリカ地球物理学連合)が発行する科学誌「Journal of Geophysical Research:Planets」に掲載された新しい研究によると、
地球形成の初期段階に生じた「ドーナツ状に回転する気化した岩石」の内部で
月が形成された可能性があるとの説が記されています。

このドーナツ状の気化岩石の回転体は、
ギリシャ語で"ひとつになる"という意味を持つ"Syn"とギリシャ神話の建築と構造の女神"Estia"を組み合わせてSynestiaと呼ばれます。
Synestiaは、巨大衝突説のように2つの惑星サイズの物体が衝突したときにかなり大きな範囲に生成され、
100〜200年というごく短期間で再び岩石質に再形成すると考えられます。

研究では、このドーナツの状態から放出された溶けた状態の岩石や金属、
その他の現象が月の原型になったとしています。
それはSynestiaが縮小していくに連れてさらに蓄積し、最終的に「Synestiaのおよそ2200〜3300℃の熱、
数十気圧の圧力の中で月として形作られた」と、
論文著者の一人、ハーバード大学のSimon Lock氏は語りました。

巨大衝突説とドーナツ説はその両方が原始の地球と小惑星の衝突というイベントを起点としており、
どちらも、後に月になる岩石や金属を放出するという共通点があります。
しかし、ドーナツ説は月の組成と地球の組成の類似点を説明しつつ、高温の中で月が形成されたため、
気化しやすい(揮発性)元素が月に少ない理由をも説明できる点が、
巨大衝突説よりも現実に即していると説明されています。

関連ソース画像
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engadgetjp
http://japanese.engadget.com/2018/03/01/synestia/