石川県能登町教育委員会は23日、同町真脇の国史跡・真脇遺跡で、
約3300年前(縄文時代後期末〜晩期初頭)の木製「火きり臼」が見つかったと発表した。
摩擦熱を利用して火をおこす道具で、縄文時代の出土例は北海道小樽市の忍路土場(おしょろどば)遺跡に次ぎ2例目。
本州で縄文時代に人々がこうした道具で火をおこしていたことが初めて裏付けられた。

■板にくぼみ
 真脇遺跡は、約6000年前(縄文前期初頭)〜約2300年前(晩期終末)の長期にわたる集落跡。
火きり臼は、史跡公園の整備に伴う発掘調査で2015年12月、
川の跡(幅約4メートル)から大量の木製品と一緒に出土した。

 火きり臼は板状で、長さ39.1センチ、最大幅5.5センチ、厚さ1.8センチ。
素材は杉で、年代は放射性炭素年代測定で特定した。
片方の側面に二つある丸いくぼみ(直径約1.5センチ)が炭化していた。
くぼみ部分に沿わせるように垂直に立てた棒を手で回転させるなどし、摩擦熱で火種を作ったとみられる。

 人類は旧石器時代には火を使用していたと考えられている。
火きり臼のように効率的に火をおこす木の道具は、国内では弥生時代以降に多くの出土例がある。
最古とされる忍路土場の火きり臼の年代については発掘当時、
周辺の出土物などから真脇のものよりやや古いと推測されたものの、他に出土例がないため議論もあった。

■石川県の真脇遺跡
 真脇遺跡の調査に携わる首都大学東京の山田昌久教授(実験考古学)は「今回は、火きり臼自体の年代と樹種を科学的に測定し、縄文時代のものだと証明した意義が大きい。当時、この技術が存在したと確定できた」と評価する。

画像:火きり臼の使い方を説明する山田昌久・首都大学東京教授。実際には木の棒を手に挟んで持ち、
回転させて摩擦熱を発生させる=石川県能登町の真脇遺跡縄文館で2018年2月23日、
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画像:炭化した痕が確認された、火きり臼のくぼみ=石川県能登町の真脇遺跡縄文館で2018年2月23日、
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図:石川県の真脇遺跡
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毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180223/k00/00e/040/361000c