私たちの感情は場合によっては、苦しむ他人への反応を阻害することがある。

マーガレット・アトウッド作の近未来ディストピア小説「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」では、
侍女のオブフレッドが次々と悲惨な目に遭う。ほとんどの読者は彼女の境遇に、
戦慄(せんりつ)しながら共感する。

牛追いの棒でオブフレッドが殴られれば、彼女の痛みを自分のものとして感じるし、
囚われの身のオブフレッドがあまりに不当に扱われる姿に感情移入して、体がこわばってしまう。

「侍女の物語」でこれほど気持ちがざわつくのは、
たとえフィクションでもその物語展開のひとつひとつが過去の歴史的事実をもとにしていると、
私たちが承知しているからだ。

作者のアトウッド氏は米紙ニューヨーク・タイムズで自作について、
「想像上の庭を作るなら、そこにいるヒキガエルは本物にしたい」と書いている。

そのおかげで私たち読者はすんなりとオブフレッドに自分を重ね、共感できる。
作品は、他者が抱く感情を共有するという、私たちのとても人間らしい能力を促すのだ。
実のところ私たちの脳は、他人の痛みを目にすると、自分自身の痛覚をつかさどる部分が活性化される。

しかし他人にどれほど感情移入するかは、自分自身の感情の状態が影響する。
私たちの脳が他人にどう反応するかは、文字通り私たちの気持ち次第なのだ。
例えそれが、苦しんでいる相手に対するものでも。特に自分がネガティブな感情を抱いている時、
こちらの気持ちに影響を受ける相手にどういう態度をとるかで、その人間関係に影響を与えかねない。

私たちの気分は明らかに、行動に影響する。嫌な気分の時は、食事の仕方も健康的でなくなるように、
ネガティブな感情は食べ物の選択から友人関係に至るまで、私たちの行動に影響する。

友達が落ち込んでふさぎこんでいれば、相手の負の感情が感染して、自分まで惨めな気分になりかねない。
2017年9月発表の研究によると、不機嫌な感情はソーシャルメディアでも広がり得る。

私たちの感情は実際、あまりに強力だ。そのためポジティブな気分は、
けがによる痛みをやわらげることもある。鎮痛剤のような効果があるのだ。
そしてネガティブな感情では、反対のことが起こる。痛みを実際より大きく感じるのだ。

さらに悪いことに、2017年12月発表によると、気分が優れないと、
他人の痛みに反応する生来の能力が影響を受けるらしい。
文字通り、共感がそがれてしまうのだ。ジュネーブ大学のエミリー・チャオ=タセリ氏率いるチームは、
痛みを感じている他人への反応に、感情がどう影響するかを理解するため、
温度が上昇する機械で被験者の足に痛みを与えた。

研究チームはまた、被験者の脳をスキャンしながら、痛みを与えたり、
他人が痛がっている動画を見てもらったり、
さらにはポジティブなビデオとネガティブなビデオをそれぞれ見てもらったりした。

続きはソースで

画像:ネガティブな感情は、苦しむ人への共感力に影響する。
写真はHuluドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」より。
小説にもドラマにも、他人を傷つける衝撃的な場面がたくさんある
https://ichef.bbci.co.uk/news/624/cpsprodpb/D32D/production/_100116045_handmaidstale.jpg

BBCニュース
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43139280