2018年02月11日 10時34分
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館山沖で見つかったメガマウスザメ=2017年5月23日、佐々木紀明撮影


 館山沖で定置網に迷い込み、その後死んだ珍しいサメ「メガマウスザメ」を引き取り、冷凍保存していた千葉県鴨川市の水族館「鴨川シーワールド」は、解剖した上で、骨格標本にすることを決めた。

 世界的にも捕獲例が少ない上、軟骨のため標本化も難しく、全身骨格標本が実現すれば世界的にもまれなケースとなる。解剖は24日、同水族館で行われる。

 メガマウスザメは昨年5月22日、館山市洲崎沖合の定置網の中にいるのが見つかり、翌日死んだ。
同水族館によると、体長約5・4メートル、体重1・2トンの雌で、捕獲例は世界で111例、国内で22例しかない。
発見されてからまだ40年あまりで、生態もよく分かっていないため、「幻のサメ」ともいわれる。

 解剖にあたるのは、サメの生態に詳しい仲谷一宏・北海道大名誉教授(72)。「剥製はくせいやホルマリン漬けの実物、
一部の骨標本は国内に数例あるが、全身骨格は世界にもない」と話す。ただ、軟骨を肉から切り離す作業が難しく、
骨のプラスチック化にも費用がかかるなど、全身標本づくりのハードルも高い。

 全身骨格なら、クジラや恐竜のような大きく立体的な標本になる。触ったり動かしたりもできる。学習の教材や展示の目玉にもなるため、
水族館関係者の期待も高まっている。同水族館の荒井一利総支配人(62)は「技術的に難しい面はあるが、
世界に例のない全身骨格標本を目指したい。珍しいサメの生態解明にも貢献したい」としている。

 解剖は仲谷名誉教授の特別講義の後、同水族館年間会員の小中学生限定で一部を公開して行われる。
解剖には全国の水族館の解剖経験者が協力し、3日間ほどかかるという。
解剖は腹の中を重点的に行い、内臓から食事の習性や生殖機能を探ることも目的で、研究者も注目している。

 仲谷名誉教授は「もしおなかに赤ちゃんがいたら学術的な意味は計り知れない。子供たちには解剖の初期段階を見てもらう」と話した。

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