2017年夏放送されたNHKスペシャル「731部隊の真実〜エリート医学者と人体実験〜」は大きな反響を呼んだ。
その制作の際の取材をもとに2018年1月21日、BS1スペシャル「731部隊 人体実験はこうして拡大した/隊員たちの素顔」が放送される。
そこで、731部隊研究第一人者・常石敬一神奈川大学名誉教授に、731部隊とは何だったのかを訊いた。


●「科学と戦争と人々――満州731部隊の歴史と素顔」講座で

731部隊とは、戦時中、細菌兵器を研究・開発する目的で旧満州に設置された関東軍防疫給水部本部の秘匿名称(通称)だ。
部隊長は石井四郎陸軍軍医中将(1892-1959年)。
731部隊の人体実験と、東大・京大・慶大の学の医学エリートがそれらの実験に深くかかわっていたことがNHKスペシャル
「731部隊の真実〜エリート医学者と人体実験〜」で明かされた。
そのスタッフ紹介テロップ冒頭に「協力」として名前が出たのが常石先生である。

731部隊というと、大ベストセラーとなった森村誠一著『悪魔の飽食』が有名だが、
『悪魔の飽食』の連載が『しんぶん赤旗』で始まる2年も前に、
常石先生は『科学朝日』で731部隊に関する連載を始め、『悪魔の飽食』が刊行される前に、
日本で初めての書籍『消えた細菌戦部隊 関東軍第731部隊』を上梓している。
その後も731部隊関係者の証言集めを含め、実証的な研究を進めてきたことで知られる。

常石先生は昨秋、
神奈川大学公開講座で「科学と戦争と人々――満州731部隊の歴史と素顔」と題した講座を開講した。
これは、1990年代後半に神奈川大学STSセンターが記録した731部隊関係者の証言を視聴しながら731部隊について学び、
「もし自分が関わっていたならどうしたか」を考えてもらおうという企画だという。

北は満州から南はシンガポールまで広がった石井機関
731部隊の母体となったのは、東京にあった陸軍軍医学校防疫研究室(防研)だ。
防研を創設したのが、のちに731部隊長となる石井四郎である。
その目的は生物兵器の研究・開発にあった。
そのために731部隊はペスト等の細菌、毒ガス、凍傷等の人体実験を行い、3000人もの犠牲者を生んだ。

驚くべきは防研が部隊を設置した地域の広大さだ。
北は731部隊のあったハルビンから、南はシンガポールまで。
日本軍の戦線拡大に歩を合わせる形で、ハルビン、北京、南京、広州、シンガポールと拡大していったのである。
それらの防研ネットワークは「石井機関」と呼ばれる。その本部が防研だった。

常石先生は石井四郎についてこう語る。

「石井四郎は医学研究のオーガナイザー(組織者)として、ものすごく優れていたんです。
当時、世界では“巨大研究(ビッグ・サイエンス)”といって、
多数の科学者を組織し多額の予算を集中させて研究を進めるという考えが出始めていました。
日本でも1935年くらいからさまざまな科学分野で巨大研究が奨励されるようになります。
でも各分野でなかなか成功例が出ないなか、
おそらく日本で一番最初に大規模に展開して成功したのが石井機関じゃないかと思いますね。
寒帯の満州から熱帯のシンガポールまでをカバーして、およそ日本兵がいるところの病気は全て網羅したのですから。
医学という分野でビッグサイエンスを日本で最初にうまく動かしたのが石井だったと思います」
(常石先生。以下「 」内同)

画像:常石敬一神奈川大学名誉教授
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続く)
まなナビ
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