子供の生きる力を育てるためには、年末年始になにをするのがいいだろうか。おすすめは「ボードゲーム」だ。
東京大学の特任講師・藤本徹さんは「子供が親と一緒にゲームをすることで、生きる力がつく」という。
ゲームで「社会の縮図」を体感することが子供の成長を促すのだ。では、どんなゲームがおすすめなのか。
「ゲーミフィケーション」の世界をご紹介しよう――。

子供は「複数人の大人と遊ぶ」ことで学び、力が伸びる
人工知能(AI)の普及が進む10〜20年後。いまある仕事の約半数がAIにとって変わるといわれている(※)。
今の子供たちが、将来困らないためには、どういった能力を身につけさせればいいのだろうか。

※オックスフォード大学のマックス・A・オズボーン博士による分析。
2015年に「未来の雇用」という論文で発表され、世界に衝撃を与えた。

私は、雑誌「プレジデントFamily2018冬号」の取材で、その「答え」を発見した。
それは「親子でボードゲームで遊ぶこと」だ。

今回、東京大学の特任講師・藤本徹さんらが主宰する「Ludi×Lab」に話を聞いた。
これはゲームと学習に関する研究者ユニットで、
藤本さんはゲームの仕組みを学習や社会問題の解決に役立てようとする「ゲーミフィケーション」の専門家である。
藤本さんは「複数人で遊ぶボードゲームでは、人の振る舞いを見て学ぶ『ソーシャルラーニング』を手軽に行うことができる」という。

「主に1人でやるデジタルゲームと違って、ボードゲームでは親や友達と一緒に遊ぶことで相互作用が生まれます。
そこで会話したり、他のプレーヤーがどのようなやり方で勝ったのかを見て学んだりすることができます。
このような社会的な環境のなかで、さまざまな学びが得られるのがボードゲームの特徴なんです」(藤本さん)

「Ludi×Lab」メンバーの福山佑樹さん(東京大学の特任助教)も説明する。

「ロシアの教育学者・ヴィゴツキーが提唱した『発達の最近接領域』(※)という概念が
あります。ボードゲームにおいても子供は自分よりも経験値が高い人と遊ぶことで、
普段の自分ができるよりも少し難しいことに取り組めるようになっていきます。自然とキャパシティーが広がり、
いろいろな力が伸びていくんです」

※子どもが自力で問題解決できる水準と、他者からの援助や協働により解決可能となる、
より高度な水準のずれの範囲のこと。

▼ボードゲームで来るAI時代を“生きる力”をつける
こうした力こそ、来るAI時代を“生きる力”になると語る。
2020年には大学入試方法を含む大規模な教育制度改革が行われる。
新学習指導要領では、生きる力をつけるために以下の3つが重要だとしている。

(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力など
(3)主体的に学習に取り組む態度

(1)はこれまでの教育で日本が得意としてきたことだ。問題は、(2)と(3)である。

そうした力を子どもに身に付けさせるために親として何をすればいいのか、
2人の子供を持つ私自身もさっぱりわからなかった。
そもそも従来型の教育を受けてきた親世代に本物の思考力や判断力が備わっているのか怪しいのだから、
わからなくても無理はないのだろうが。

しかし、「ボードゲームさえやっていれば、思考力も判断力も表現力も主体的に学習に取り組む態度も、大丈夫だ」と
Ludi×Labの皆さんは太鼓判を押す。
子供にとっても楽しい「遊び」だから、勉強のように「やりなさい」と叱る必要もなさそうだ。


藤本さんの言う「人の振る舞いを見て学ぶ=ソーシャルラーニング」は重要だ。
私たちは社会に出て企業に勤めるまで、ソーシャルラーニングの機会が少ない。
でも、それでは“生きる力”が不足したまま社会人として働き出すことになり、グローバル競争やAIとの仕事の奪い合いで負けてしまう。

続きはソースで

PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/24121