理研や東京大学などが、量子コンピュータの情報単位「量子ビット」をより高精度化したものを実現。
演算速度や量子コンピュータを使える時間を改善できるという。

 理化学研究所や東京大学などの研究グループは12月18日、
量子コンピュータの情報単位「量子ビット」を実現する素子をより高精度化したと発表した。
従来と比べると演算速度が約100倍になり、量子コンピュータを計算作業に使える時間も伸びるという。

 量子コンピュータは、量子ビットと呼ばれる情報単位を用いる。量子ビットは0と1に加え、
0と1の「重ね合わせ状態」(量子の重ね合わせ)を扱える。量子計算のアルゴリズムを使えるため、
従来のコンピュータと比べて計算や解析が短時間で行えるといわれる。

 実用化には、演算精度が99%以上の高精度な量子ビットが必要になる。そのためには

(1)量子ビットの演算速度を向上させる、
(2)量子ビットは時間経過とともに情報を失う(重ね合わせ状態を失う)ため、

より長く保持できるようにする(情報保持時間)――という条件を両立させなければならない。
2つの条件を別々に達成する手法はあったが、同じ材料を使って両立した例はなかった。

 研究グループは、より情報保持時間を長くするために、磁気的な雑音が少ないシリコン同位体の基板を使い、
「量子ドット」と呼ばれる構造を作った。この構造に閉じ込めた電子の自転(電子スピン)を量子ビットとして使い、
微小な磁石で高速にスピン操作を加えたところ、通常の約100倍の演算速度を実現したという。

さらに、量子ドット周辺の材料から雑音が出る要因を取り除き、通常と比べて約10倍の情報保持時間を実現。演算速度と情報保持時間を両立したことで、演算精度の誤りを少なくできた。研究グループによれば、演算精度は99.9%を達成したという。

研究には科学技術振興機構(JST)、理化学研究所、東京大学に加え、東京工業大学、慶應義塾大学も協力。
研究成果は12月18日(英国時間)に国際科学誌「Nature Nanotechnology」オンライン版に掲載された。

図:量子ドット素子の概念図
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図:周期から量子演算に必要な時間が分かる「ラビ振動」
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図:量子演算の正確性の検証
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ITmedia NEWS
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