自動運転カーが普及すれば渋滞が解消するという見方もありますが、
一方で「どれくらい早く加速できるか」によっては交通渋滞が劇的に悪化する場合もあるというシミュレーション結果も出ています。
そんな中、「車の後方にセンサーを取り付けて前方車両だけでなく後方車両との車間距離もコントロールすれば、
交通状況は劇的に改善する」という研究結果が発表されました。

Wave Equation of Suppressed Traffic Flow Instabilities
(PDFファイル)http://people.csail.mit.edu/bkph/papers/Bilateral_Control

If We All Stopped Tailgating, We Could Dramatically Cut Traffic Jams
https://www.forbes.com/sites/lauriewinkless/2017/12/15/if-we-all-stopped-tailgating-we-could-dramatically-cut-traffic-jams

MITの研究で示されたのは、
それぞれの自動車が前後の自動車との距離をベースにして速度を調整する「バイラテラル制御」を用いたアプローチ。
「前の車との距離からスピードを計算する」というのは、これまでも私たちが行ってきたことですが、
新しいアプローチでは前方だけでなく後方の車との車間距離も調整されます。

今回の研究で示された方法は、先行車の動向に対応して車速制御を行うアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)という、
既存の方法を利用したもの。近年の車は車体前方のバンパーにセンサーを搭載しており、
前方者に追従する形で車間距離や時間差を最小にしています。そのため、前方の車がスピードを変更すると、
ACCを搭載した車は追随して速度を変更するようになっています。この機能は車の安全性を確保するために役立っていますが、
交通の流れについて改善しないどころか悪化させることも。

以下の画像をクリックした先のGIFアニメーション(約1.4MB)は上段がバイラテラル制御を用いた車の流れで、
下段が既存の自動車追従モデルを搭載した車の流れを示すもの。既存モデルを用いた場合、交通量の多い道路では、
赤い車は前の車が加速すると車間を保つために加速しますが、それでも追従する車の流れを混乱させ渋滞を生み出しています。
一方で、前後の車間距離を両方ともコントロールするバイラテラル制御を用いると、速度を変化させても大きな渋滞が起こることはありません。

研究を行ったMITのバートホールド・ホーン教授は「人間は『目の前にあるもの』から世界を認識する傾向があるので、
背後を見るという考えは直感に反するかもしれません」と語りつつも、
バイラテラル制御を利用することで新たなインフラ構築なしに交通渋滞を劇的に緩和できることを研究結果で示しました。

研究者らによると、交通渋滞が起こるギリギリ直前にバイラテラル制御が適用されたとしても、すぐに車の流れをスムーズに修正できるとのこと。
また、車線変更や車線の合流場所においても、効果を発揮すると示されています。
そして、車間距離を保つための加速は、車に乗っている人が不快感を感じない程度のものだそうです。

ただし、この方法を実行するには車の後方にもセンサーを取り付ける必要があるため、
交通状況を緩和するためには車メーカーにセンサーの搭載や、ACCソフトウェアをアップデートをを呼びかける必要があります。
研究のデータが示すところでは、少数の車がバイラテラル制御を取り入れるだけでも、
交通の流れの改善が見込まれるとのことです。

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20171219-tailgating-traffic-jam/